「います」と「あります」の導入文型
みんなの日本語初級第10課の導入文は
- あそこに コンビニが あります。
- ロビーに 佐藤さんが います。
- 東京ディズニーランドは 千葉県に あります。
- 家族は ニューヨークに います。
です、
- 〔場所〕に〔モノ〕があります。
- 〔場所〕に〔ヒト〕がいます。
- 〔モノ〕は〔場所〕にあります。
- 〔ヒト〕は〔場所〕にあります。
の形式で一見非常に簡単に見えます。
「います」「あります」の使い分け
確かに
- 机の上に猫がいます。
- 机の上に花があります。
ですから、基本は
でたいていのケースで区別可能ですが、実は判断に迷うケースもあるのです。
たとえば
- お腹の中にビフィズス菌がいます。
- 机の上に牛肉があります。
菌やウイルスは動物ではありませんが、生命、つまり意志をもって動く(ように見える)ので「います」。動物でも死んでしまえば意志はなく、自ら動くこともできないので「あります」を使います。
ですから「います」「あります」の区別はより正確には、
有情物(うじょうぶつ)、無情物(むじょうぶつ)というのは専門用語なのですが、要するに、意志があるかないかで区別するということです。
では次の例はどう考えればよいでしょう。
- あ、あそこにタクシーがいるよ!
- 鈴木さんの乗ったボートはあそこにいる。
- あそこに誰も乗っていないボートがある。
- 私には兄弟が(いる/ある)。(どちらもOK)
人の乗ったタクシーなどの乗り物は、外見上、意志をもって動くことができるように見えるので「いる」を使います。また「兄弟」「家族」などは話者が個々の成員を意識してその存在をいう場合は「いる」、個々の成員を意識せず単に有無を言う場合は「存在文」ではなく「所有文」と見なし「ある」が使われます。
ですから正確に「います」「あります」を区別する基準は
となります。
「います」「あります」の区別まとめ
以上、視覚的にわかり易いようにまとめると以下のようになります。
- 部屋に蚊がいます。
- ホームに電車がいます。
- 小惑星探査機「はやぶさ」はどこにいるのだろう。
- 空に太陽があります。
- あそこに誰も乗っていないボートがあります。
- 冷蔵庫に豚肉があります。
- 私には妻が(います/あります)。(存在文/所有文)
- 同じ学校に兄弟がいます。
ちなみに、以前日本の小惑星探査機「はやぶさ」が宇宙を飛行中、電波が途切れしばらく行方不明になるという事故がありました。当時は「はやぶさは今どこにいるんだろう?」と日本人はみな心配していたものです。
~に~が(います/あります)、~は~に(います/あります)の文型
「〔場所〕に〔主語〕が~」の形は基本的な文型なのですが〔場所〕が先に来るという意味では特徴的な文型です。
また「〔主語〕は〔場所〕に~」は上の文の〔主語〕をとりたて助詞「は」を使って主題化(取り立てた)した文ということが言えます。
「教室に学生がいます」の「教室」を主題化すると「教室には学生がいます」となります。
「みんなの日本語」第10課では「います」「あります」の区別と共に、取り立て助詞「は」による「主題化」が重要ポイントとなります。
中国のテキスト「新編日語」での「います」「あります」の導入
中国の大学でよく用いられる「新編日語」では第3課で初めて文型「~は~です」「~も~です」を学習したあといきなり第4課で「あります」の文型を勉強します。
上の文のように最初に「~は~に…」が出てくるのも日本とは違っています。とにかく理屈抜きに覚えてしまえ、ということなのかもしれません。
(以上、初級を教える人のための日本語文法ハンドブック スリーエーネットワーク刊などを参考にさせていただきました。)
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