「浮かぶ」「浮く」「浮かせる」「浮かす」「浮かべる」の違いについて考えてみましょう。
「浮かぶ」と「浮く」
5つの中で「浮かぶ」「浮く」の2つが自動詞です。「浮く」は「比重差で上昇する」という意味で、「沈む」と対をなしています。これに対し「浮かぶ」は同じ現象を表しますが「そのものが(上昇して)目立つこと」に力点が移ります。
- 油は水に浮く。(×油は水に浮かぶ)
- 太平洋に浮かぶ島。〔比喩的用法〕
「浮かべる」「浮かせる」「浮かす」
3つの他動詞の中で最も他動詞としての性質が強い(他動性が高いといいます)のが「浮かべる」です「なんらかの力によって浮かんでいる状態を実現する」ことを示します。
- 笹で作った舟を小川に浮かべる。
- 1円玉を水面に浮かべる。
「浮かせる」は「浮く」が「使役」の形に変化したものです。「浮かす」は「浮かせる」とほぼ同じ意味の他動詞です。それぞれ「沈ませる」「沈める」と対応します。
- ウイスキーに氷を(浮かせる/浮かす)。
- 思わず腰を(浮かせる/浮かす)。〔比喩的用法〕
上の絵に描いたように「浮かせる/沈ませる」のペアは「浮く」「沈む」両動作のための「外部からの力が強い」感覚があり、「浮かす/沈める」のペアはやや弱いイメージがあります。
「浮かせる」⇔「沈める」
「浮かせる」≒「浮かす」、「沈ませる」≒「沈める」ということになりますが、上に書いたように「外部からの力」=「強制力」という観点で見ると「使役」の形式の方が強制する感覚(下表では強制感としています)が強いように感じられます。
一般にモノを沈めるより浮かせる方が外部力を要しますから、通常は「浮かせる(使役)」「沈める(他動詞)」をよく使うようです。
- 一般にモノを沈めるより浮かせる方が外部力を要する。
- △一般にモノを沈ませるより浮かす方が外部力を要する。
「使役」≒「他動詞」のその他動詞の例
同様のペアの例を以下に示します。
「浮かぶ」「浮く」「浮かせる」「浮かす」「浮かべる」まとめ
以上まとめます。
(以上、基礎日本語辞典 森田良行著 角川書店刊、三省堂国語辞典第八版 などを参考にさせていただきました)
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