「だけ」と「ばかり」の違い

「だけ」「ばかり」違い

限定を表す「だけ」と「ばかり」

 「だけ」も「ばかり」も、そのものに限るという「限定」の意味で使います。

  • だけは助けてください。
  • ばかりは助けてください。

 上の2つはほとんど同じ意味のように思えますね。ここではこの「限定」を示す「だけ」と「ばかり」の違いについて考えましょう。

それ以外ない「だけ」、そういうことが多い「ばかり」

 次の例はどうでしょう?

  • 〇 彼は休みの日寝てばかりいる。
  • × 彼は休みの日寝てだけいる。
寝てばかりいる男の子

寝てばかりいる男の子

「寝てばかりいる」は言えますが、「寝てだけいる」は言えません。「寝てばかりいる人」というのは24時間すべて寝ているのでしょうか?そんなことありませんね。常識的に考えて「寝ていることが多い」人のことです。「寝てだけいる人」というのが24時間寝続けていてまったく目覚めることのない人を指すことになります。

 「ゲームばかりしている人」「夜中にトイレに行ってばかりいる人」という言い方もできるように、回数ある動作について「頻度が多い」ことを示すのが「ばかり」、「100%それ以外はない」ことを示すのが「だけ」という違いがあるようです。

「見てるだけ?」「見てるばかり?」

 次のような状況を考えてみてください。

ブティック

おしゃれな洋服を売るブティック。いつも来るお客さんを見て店員たちが言います。

  • 店員同士「あの人、服を見るばかりで 全然買ってくれないよねー。」(〇:見るだけ)
  • 店員の一人が客に近づいて
  • 店員「お客様、ご試着なさいますか?」
  • 客「いいえ、見てるだけですから。」(×:見てるばかり)

この場合、店員は「見るだけで買わない」は言えるのに、客側は「見てるばかりです」とは言えません。

こんな風に考えてはどうでしょう。つまり店員にとってみればまだ客は服を買ってくれる可能性が残っている。それに対し客の方は自分の心はわかっている、つまり買うつもりは全くないとしましょう。すると、

店員にとっては、可能性の中の「買ってくれる」ことを含めれば「買わない」が”多い”ケースだから「見てばかり」、お客にとっては買う可能性はゼロだから「見てるだけ」
つまり未来の可能性も含めて「多い」というケースで「ばかり」が使われるということになります。同様の例をもう一つ。

「はずればかり?」「はずれだけ?」

 くじ引きをしましょう。くじを引いた人は3回連続「はずれ」でした。

  • 「なんだ。はずればかりじゃないか?」(×:はずれだけ)
「はずればかりだな」

「はずればかりだな」

 くじを引く人は抽選箱の中に「あたり」が入っていると信じてますから、上のケースでは抽選箱の中にはいっているであろう未知の「あたり」も含めて、大多数(多い)方の「はずれ」が複数でているという意味で「はずればかり」と言えるのです。

 これに対し、くじ引きを作った人がこう言ったとしましょう。

  • 「くじははずれだけなのさ。」(×:ばかりなのさ)
はずれだけ

はずれだけなのさ

こういう抽選はよくないですが、はずれが100%なら「はずれだけ」という言い方ができるのです。

以上まとめて

限定の「だけ」「ばかり」は、それ以外ない時「だけ」、想像や予想も含めてそういうことが多い時「ばかり」を使う
ということになりそうです。

「だけ」「ばかり」のその他用法

 今回は「だけ」「ばかり」の「限定」を表す用法に限ってまとめました。「だけ」「ばかり」にはこのほかに「程度」を表す用法があります。また「ばかり」はこれらに加えて「直後動作」を表すこともできます。以下に簡単にまとめておきます。

  ばかりだけ
限定ばかり言うあなただけが好き
意味多いそれ以外なし
程度100元ばかり使ったそれだけ買えば十分
意味範囲限度
直後動作今帰ったばかりです 
意味完了後まもない 
 
直後動作を示す「~たて」「~ばかり」「~ところ」については下記記事もご参照ください。
(以上、「くわしい国文法中1~3」(文英堂)、「日本語の難問」宮腰賢(宝島社)などを参考にさせていただきました。)
 

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