「決まる」「決める」の使い分けなど、自他ペアのある動詞の使い方について

お茶が入りましたjapanese

「決まる」「決める」

 元学生さんから質問をいただきました。次のような四択問題です。

・週末、どこへ遊びに行きますか?まだ(      )。

1.決まりました 2.決まっていません 3.決めていません 4.決めました

 あまりよく考えずに、正解は3と答えてしまいました。遊びの計画は自分が主体的に決めるのですから他動詞の「決める」が正用法で、自動詞の「決まる」を使うと誰か他の人が決めるようになっていまうという説明です。おそらく出題者の意図した正解も3だと思います。
 しかし、よく考えてみると2の
「週末、どこへ遊びに行きますか?」「まだ、決まっていません。」も正しいように思えます。おそらく質問した人の疑問もそこではなかったかと思います。
  2.3.どちらも正解というのが普通の日本人の答えになるでしょう。

対応する自動詞、他動詞を持つ動詞

 「閉まる/閉める」のように対応する「自動詞」「他動詞」を持つ動詞については、

  • 自動詞:できごとが(人の手を借りずに)自然に起こった動作(ドアが閉まる)
  • 他動詞:人間などの意識的動作によって引き起こされる動作(ドアを閉める)

 と習います。ですから「決まる/決める」の自動詞他動詞ペアに関しては、上の例のように人が意識的に決める計画などは「決める」が正解となるはずです。

 出題者の意図もそこにあります。

責任の所在をあいまいにする自動詞

 しかし日本人は自動詞の「自然に起こった動作を表す」という性質を利用して、さまざまな局面で自動詞をうまく使って”ほどよい”コミュニケーションをはかっているのです。以下の会話を比べてみましょう。

  • 会話①割れたコップ
  • 客:「すみません。コップを割ってしまいました。」
  • 店員:「あ、割れちゃいましたか。すぐにお取り換えしますからお待ちください。お怪我はございませんか?」
  • 会話②
  • 客:「すみません。コップを割ってしまいました。」
  • 店員:「あ、割っちゃいましたか。すぐにお取り換えしますからお待ちください。お怪我はございませんか?」

 会話①では客の他動詞「割る」に対し店員は自動詞「割れる」を使っており自然な会話になっていますが、会話②で店員が他動詞で答えると、「おまえが割った」ことを強調しているように聞こえて、客は不快な思いをするでしょう。

つまり、自動詞の役割として

対象動作の主語をあいまいにすることで、責任の所在をうやむやにすること
があります。
責任よさようなら
ですから客がコップを割ったことを責めないことを示すためにあえて「自動詞」を使うのです。
 最初の問題に上げた「決まっていない」という表現も、あえて「自分が決める」ことを強調しないで場合は自動詞で十分なのです。
 例えば
  • 今度結婚することが決まりました。/今度結婚することに決めました。

 は普通「決まりました」と言う方が多く。「決めました」というと何か特別な努力をしたとか、障害を乗り越えてやっと結婚するというようなニュアンスが出てしまいます。

その他よく使う自動詞表現

 上のような意味でよく使う自動詞表現として以下のようなものがあります。

自動詞表現他動詞表現
結婚が決まる結婚を決める
部屋が片付く部屋を片付ける
関係がこじれる関係をこじらす
お酒がこぼれるお酒をこぼす
観葉植物が枯れる観葉植物を枯らす

相手に負担をかけない自動詞表現

 「責任の所在をあいまいにする」という役割の他にもう一つ、自動詞をうまく使う日本語の言い方として、

自然に起こった動作のように表現し相手に負担をかけない
急須とお茶 というものがあります。
 これはタイトル下の写真にあるように、お茶を出す時、「お茶を入れました」ではなく「お茶が入りました」のように自動詞、つまりそんなことはありえないのですが「お茶」か勝手に湯呑に入ったかのような表現をすることで、「自分はなにもしておりませんが…」という謙虚な心持ちをあらわしているのです。
 以上のようなことは日本語を勉強する上で相当大切なことだと、私は思っています。
 
(以上「なにげにてごわい日本語」すばる舎などを参考にさせていただきました。)
 

 

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