タイトルの文は一般的には「かけそばを一杯食べた。」といいます。
「一杯のかけそば」
実は「一杯のかけそば」という短編小説があるのです。映画もされておりけっこう泣ける話です。興味のある人はネット検索すると全文出てくるはずですから調べてみてください。
しかし日本の「蕎麦屋(そばや)さん」で注文する時は「かけそばを一杯ください」というのが普通(ちなみに「かけそば」というのは具がのっていないそばのことです)で「一杯のかけそばをください」というと何か変な感じがします。
「数量詞」の位置
まず、数を表す言葉(数量詞)の位置を各言語で比較してみましょう。
- 英語:I ate three apples.
- 中国語:我吃了三个苹果。
- 日本語:私はりんごを三つ食べました。
英語や中国語では「名詞+数量詞」のような語順が普通ですね。これに対し日本語の方は「りんごを三つ」と逆になり特殊なのだとわかりますね。では日本語で「数量詞+名詞」で間違いかというとそうでもなく、
- 三つのリンゴを食べました。
- でも間違いではありません。が、この言い方にはどこか違和感が残るのです。その違和感の理由を他の例文で探ってみましょう。
「6個のたまごをください」
たとえば、お店で
- たまごを6個ください。
- 6個のたまごをください。
と言ったときどんな違いがあるでしょう?
「たまごを6個ください」は単純にたまごが6個欲しいことをしめしますが、「6個のたまごをください」というと、6個がセットになったパック入りのたまごをください、と言っているように聞こえます。
次の例はどうでしょう。
- 昨日本を150ページ読みました。
- 昨日150ページの本を読みました。
「150ページの本」はページが全部で150ページある本」という意味になります。
つまり日本語で「数量詞+名詞」の形式をとるのは「ひとまとまり」の意味を表す時なのです。
「3000グラムの赤ちゃんを産みました」
もう少しわかりやすい例です。
日本ではよく生まれてきた赤ちゃんの体重を話題にすることがあるのですが、
- 3000グラムの赤ちゃんを産みました。
なら別に問題ありませんが、
- 赤ちゃんを3000グラム生みました。
と言ってしまうと、「まだ残りがお腹の中に残っている~!!!」という意味合いになり、ホラー映画以外の何ものでもなくなってしまうのです。
「一杯のかけそば」「一杯のコーヒーから」
表題の「一杯のかけそば」という小説は、貧しい親子3人が一杯のかけそばを分け合って食べるところから話が始まります。そこからその「一杯のかけそば」を核にして話が展開されるという意味で「一杯のかけそば」が物語の全体を象徴しています。
また大昔(1939年)に大ヒットした「一杯のコーヒーから」という流行歌があります。これも「一杯のコーヒー」をきっかけにして出会いから恋に落ちることもあるという一つの物語を表現しているのです。
日本にもこんな曲が流行した時代があるんですね。
なかなか面白いので参考までに一部聴いてみてください。(*’▽’)
一杯のコーヒーから、夢の花咲くこともある。
街のテラスの夕暮れに、二人の胸の 灯が、ちらりほらりとつきました。
以上です。
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