コップの中の水分子はいくつ?
中学生ぐらいでならったアボガドロ数って覚えてますか?「6.02×10の23乗」とか覚えさせられましたね。アボガドロ数というのは1モルの物質中に含まれる分子の数。例えば水はH2Oで分子量18ですから、水18グラムは6.02×10の23乗個の水分子で成り立っていることになります。コップ一杯だとだいたい180グラムぐらい、つまり6.02×10の24乗個の水分子があることになります。数字が大きすぎてイメージできませんね。
では問題。コップに入ってる水の分子のすべてに、仮にあなたの名前を付けたとしましょう。まあ、名前をつけるというのも何ですから、例えばあなたの目の前のコップの中の水の分子全部に赤いマークをつけたとします。きっと右の絵のようにコップは、真っ赤な液体に満たされることでしょう。(水の分子そのものに赤いマークをつけることは実際はできません。が、ここではできたことにして話を進めましょう。)
コップ一杯の赤い液体を世界中の全部の水で薄める
次にそのコップの水を、飲んでしまうにしろ、捨てるにしろ、自然の中に拡散させましょう。水は比較的安定な物質ですから、そう簡単に別のものに変化することはありません。なくなってしまうことはないとしましょう。川に流れ、海に出、蒸発して雲となって雨になる…、あるいは別の生き物の中に取り込まれたり、水の行き場はさまざまです。全地球に均一になったころを見計らって、もう一回、どこからでもいいですが、コップで一杯すくい上げてみましょう。
再びコップ一杯をすくいとる
新しいコップの水の中に、以前あなたが捨てた水の分子、つまり赤マークの分子はあるかないか?
全地球に拡散ですよ。下の図のようなことです。イメージ的にはいくらなんでも、元の水分子はないだろうなあと思いますよね。
実際に計算してみましょう
コップは先ほどと同じ180㏄つまり180立方センチメートルとします。重さ180グラムとすると、ちょうど水10モルなので水分子はアボガドロ数の10倍、6.022×10の24乗個です。水分子の一つ一つへの赤いマーキングも、できたとしましょう。6.022×10の24乗個のマーキングされたコップ1杯の水の完成です。
それを大自然に拡散させましょう。もちろん飲んでもいい。全地球の水と均一に混ぜるのは難しいと思う必要はありません。エントロピー増大の法則という物理法則があって、水の中にインクを落とした時のように、いやでも放っておいたら、最終的には均一に混ざってしまうのです。それまで、実際には途方もない時間がかかるかもしれませんが無視しましょう。
近年、地球上の水の総量の概算数値がわかりました。国土交通省の資料に地球上の水の総量が記されていました。〔Assessment of Water Resources and Water Availability in the World ; I, A. Shiklomanov, 1996からの孫引きです。〕海水、淡水合わせて138.6万/1000立方キロメートルだそうです。(1000立方平方キロメートルを単位として138.6万ということです)ややこしいので、単位を立方センチメートルに直すと、1.386×10の24乗になります。
計算結果
これだけわかれば、後は比率計算するだけ。
マーキングされた赤い水分子の数:6.022×10の24乗個を
180立方センチメートルを全地球の水1.386×10の24乗立方センチメートルで薄めるわけだから、計算は
〔6.022×10の24乗〕×180÷〔1.386×10の24乗〕=782!
私はこの計算結果に、ある種のロマンを感じました。みなさんはいかがでしょうか。
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