シニア世代の新しい生き方 中国の大学で日本語教師

教室で授業する日本語先生essay

中国の大学で日本語を教える。これはシニア世代の日本人のセカンドキャリアとして、条件さえそろえばやってみる価値のあるものだと思います。私自身の体験を踏まえ、お話します。

自己紹介

少し自己紹介します。60歳で会社を辞め中国江蘇省南通大学で日本語教師をやっています。これまでの経歴は、国立大学の工学部修士を出た後、化学企業の研究開発部門で長く勤務、55歳部長職で会社を辞め、中小企業に転職、その会社の中国子会社で総経理職を数年経験し会社人生を終了。60歳から南通大学の日本語教師となり2021年夏の時点で4年経過しています。子供は二人、下の娘は私が55歳の時大学を卒業しました。

日本語教師を目指した動機

技術の世界だけに生きてきたので、直接人と関わる仕事がしてみたいという思いは若い頃からありました。

SDP 第一期

南通開発区工場建屋(第一期)

モノづくりする技術屋というのは、自分の仕事の成果に対して、それを使う人から直接感謝されることはないものです。例えば私がいた会社でお世話になった上司。この人は業界では知らない人がいないぐらいの人で、紙おむつや生理用品に使われる吸水性樹脂というのを世界で初めて実用化した人。しかし、彼の発明の恩恵を受けている世の中のお母さんや女性が彼を知っているかというと、誰も知らない。

世の中というのは、すべて誰かが努力して作り上げたもので成り立っていますが、普通に生活していても、今あるものは誰のおかげかと、考えることはありません。そういうことがが気に食わなかった、ということではもちろんありません。しかし個人的にセカンドキャリアというものを考えた時、例えば先生という仕事なら自分の努力が直接相手から跳ね返ってくるので、技術者とは別のやりがいがある仕事なのではとの思いはありました。

日本語教師を意識した直接のきっかけ

2005年だったと思います。南通市の開発区に立ち上げた現地工場への技術移転のため、初めて中国に出張し南通を訪れた際、たまたま南通大学で日本語教師をされていたA先生とお話しする機会がありました。たぶん当時70歳前後であったA先生が、はつらつと生活されておられる姿に接し、60歳定年後には、自分もやってみたいと思い、具体的なアクションを起こしました。

日本語教師をやってみて

60歳から4年間、実際に南通大学で日本語教師やってみた感想を以下に述べます。

やりがい

やりがいについては他の場所でも書きましたが、サラリーマン時代とは異なり、全くストレスフリーで楽しく授業に向かうことができます。自分の仕事を自分ですべてコントロールできるという意味で、やりがいは十分あり、自分のやる気を阻害するものは何もありません。

中国人は教師を尊敬すべしという風に小さい頃から教え込まれているのか、つまらない授業、失敗授業でもちゃんと聴いてくれます。日本のように、あわよくば教師の足元をすくってやろうとする生徒(私だけか?)に矛盾を指摘され立ち往生する心配はありません。

彼、彼女らは恐ろしく真面目に勉強に取り組んでくれます。競争社会のなせる業でしょう。

むずかしさ

先生中国で日本語教えるって「中国語ができなければならないのでは?」と思う方がいます。が、これはまったく誤解。むしろできない方が好ましいとされています。ほとんどの授業は日本語だけですることが理想ですし、日本語教師養成学校ではそのコツを教えてもらえます。

そして先生になったことのない会社員がいきなり教師になることについて。これは意外と思われるかもしれませんが、むしろメリットの方が多いのです。中国の大学の日本語学科にはたいてい「外教」と呼ばれる日本人の先生がおられます。会社で働いていた人も多いですが、その多くは短い期間です。そんな中で一応60歳までの企業経験は貴重です。学生も教師専門でやってきた先生とはいい意味で少し違った目で見てくれます。多くの学生は将来日本企業で働くことを考えてくれていたりするからです。だから、「教育」が専門でないことのデメリットより、企業経験があることのメリットの方がはるかに大きいのです。

自由

時間はたっぷりあります。ざっくり言ってしまうと、1~2月、7~8月の4カ月間は冬期休暇、夏季休暇で、原則授業はありません。残る8カ月の学期中は1週間に最高16コマ(1コマ40分)、16×40=640分、実働1週11時間弱の労働(?)時間です。それ以外の時間はまったく自由となります。

日本で教師をすることとの最大の違いは“評価されない”ということです。もちろん日本語学科ですから学生に日本語習得をさせることは大学の大切な任務なのですが、そういうことに責任を負うのは中国人の偉い先生方で、日本人の先生は教科書も自由に選んで、進捗もフォローなし。他の大学は違うかもしれませんが、少なくとも私の教える南通大学ではそうです。

ですから逆に、自分で工夫して一生懸命教育に打ち込むことも可能です。私自身は、けっこうまじめに、何とかしてフルタイム労働の1週間40時間稼働できないかと考えたりしてますが、それらすべて自由裁量ということになります。

シニア世代の新しい生き方として

もちろん、楽しく仕事ができる分、収入は少ないです。真面目に普通のサラリーマンをやっていた人なら10分の一程度になるかもしれません。ですから若い人にはあまりおすすめできません。

ただ、経済的な面、ご家族の状況などが許せばという条件がつきますが、これまで頑張ってきた自分へのご褒美という意味で、少し違う世界を見てみる。そして人生100年時代、次のステップへの足掛かりを得るという意味でも、中国での日本語教師というのはおもしろい選択の一つではないかと思います。

中国の大学で日本語教師、第二の人生をアップグレード!
私は2021年現在、中国江蘇省、上海と長江を挟んで隣接する南通市にある南通大学で日本語教師をしております。個人的には50代のサラリーマン、特に50代半ばを越え、人生100年時代に向け、積極的に新しい生き方を探しておられる方々に、中国の大学での日本語教師の道をお勧めしたいです。

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