35年目の「いいね!」

essay

禁煙をして5年になる。禁煙を決意した後、遊び心で、“禁煙ブログ”と称して、自分の完全禁煙に至るの記録をつけてみようとブログを書いいた。第1日の記事をFacebookで共有したところ、思いもかけず、35年間ほぼ音信の途絶えていた女性Kさんから“いいね!”クリックの励ましがあった。

大学院時代、企業に就職せず博士課程後期へ進み、研究者の道へ進むつもりをしていた。が、母親の急な病もあり、就職の道を選んだ。わがまま勝手に生きてきた自分にとっては実質人生初の挫折であり、やや気分はすさんでいた。

Kさんとはそう長いお付き合いではなかったが、自身がそのような人生の分岐点に差し掛かった時点で、知己となった人物ということで長く印象は消えない人となった。

赤い車と六甲山

そろそろ卒業で離ればなれとなるという頃、彼女の赤い車を運転させてもらって、ドライブにでかけた。彼女は奈良、私は京都であったから、行先は神戸を選んだ。海を見て、兵庫の摩耶山、六甲山を縦走した。80年代の当時、私も彼女も、オフコースだの、来生たかおだのの音楽が好きであり、車中聴いた音楽は今でも耳の奥に残っている。それ以外のことはあまり覚えていない。

後日、彼女から封書の手紙が来た。中には奈良東大寺のお札がある。もともと東大寺は病気快癒を願って建立されたものなので、病気に効く。私の難病の母に、とのことであった。女性らしい情感のこもった手紙で、しばらく保存していたのだが、度重なる引っ越し人生、今はもうどこかへいってしまった。

学生時代は、体育会系運動部にいたので煙草は吸わなかった。喫煙習慣は大学院で研究生活を送るようになってからのことであるから、Kさんとの出会いの時期であろう。当時は煙草を吸うのが、なんとなく格好いいと思われた時代であり彼女との1回きりのデートの際も、車の中で煙草をずいぶん吸ったようだ。

彼女の手紙の中に確かこのようなことが書いてあったことを、実は彼女のいいね!で思い出した。

「昨日はとても楽しかった、ありがとう。今日車のドアを開けると、あなたの香りがしました。」

若い男性がもらうと少し嬉しくなる表現である。

続いてこうあったように思う。

「あなたの香りと思ったのは、実は煙草の臭いでした。」

要は、愛車を煙草の臭いで汚染されたことが、少々気に食わなかったのかもしれない。

実は彼女からいただいた東大寺のお守りは効き目がなかった。
35年目のいいね!クリックは多少なりとも効果があることを祈っている。

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