「~にしたがって」「~につれて」「~に伴って」「~とともに」の違いについて考えましょう。
日語総合教程第五冊中の表現
江戸時代にも鉱石が掘り出されていたが、一八七七年(明治十年)にある実業家がこの銅山を買い取ってからは、鉱夫の数は三千人、年間四千百トン余りもの銅を産出するようになり、それとともに、鉱毒の害があらわになってきたのである。
P29第2課「田中正造」
林の中の小さな家は、やがて魚の匂いでいっぱいになりました。それにつれて、家の中は米や豆や野菜や果物でいっぱいになりました。
P120第5課「木の葉の魚」
P120第5課「木の葉の魚」
「~にしたがって」「~にしたがい」
「~にしたがって」:~(の変化)と一緒に。何かが変化すると、それに合わせて別のことも変化することを表します。前件も後件も変化を表す表現がきます。後件には前件から論理的に考えればそうかなと思えるようなことが来ることが多いようです。
・街の工業化が進むにしたがって、失業率も減ってきた。
・年齢が高くなるにしたがって、貯蓄額が増えている。
・携帯電話の普及にしたがい、固定電話の契約数が減った。
・年齢が高くなるにしたがって、貯蓄額が増えている。
・携帯電話の普及にしたがい、固定電話の契約数が減った。
漢字で書けば「従って」であり秩序的・論理的・段階的な変化の表現に使いやすい。やや硬めの表現のため、命令やルールにも使えます。論文や説明文に適します。
「~につれて」「~につれ」
「~につれて」:~(の変化)と一緒に。「~にしたがって」とほぼ同じ。前件の条件下では、当然自然発生的に生じる内容が後件に来ることが多いようです。
・台風が近づくにつれて、雨と風が強くなってきた。
・アイスクリームは、気温上昇につれて売り上げが増えていくものだ。
・お腹が空くにつれ、イライラしてきた。
・アイスクリームは、気温上昇につれて売り上げが増えていくものだ。
・お腹が空くにつれ、イライラしてきた。
漢字で書くと「連れて」。連動的・感覚的・自然発生的な変化を表すとき使いやすいようです。そのせいか文体もやや柔らかめで日常的な説明にも使えます。
「~に伴って」「~に伴い」「~に伴う」
「~に伴って」:~と一緒に。何かが変化あるいは起こったとき、それに合わせて、変化したり起こることを表します。つまり前件、後件ともに「変化」するものでなくても使えます。一回性のことにも使えるのが上の二つとの違いです。
・アパートを借りるに伴って、さまざまな手続きが必要だ。
・地震に伴って、津波が起きる可能性がある。
・入院に伴う費用はすべて保険が効くので心配はいりません。
・地震に伴って、津波が起きる可能性がある。
・入院に伴う費用はすべて保険が効くので心配はいりません。
「伴い」は「同伴」の伴。因果的・付随的なイメージで、フォーマルな文、すなわち、ビジネス・報道・公式文書に多用される傾向があります。
「~とともに」
「~とともに」:~と一緒に。遅れて起こる、因果関係があるというものでなく、「一緒に」のイメージがあります。一回性のことに使えるのは「~に伴って」と同じ、さらに「同時」という意味でも使えます。
・日本での生活が長くなるとともに、友達も増えてきた。
・地震とともに津波が発生する危険がある。
・彼は高校の先生であるとともに、大学院の学生でもある。
・地震とともに津波が発生する危険がある。
・彼は高校の先生であるとともに、大学院の学生でもある。
「とともに」は「と共に」。同時性・共存・並行性が強調されます。感情や人間関係にも使える。文体はやや硬めになります。
まとめ(イメージ)
各表現をイメージでまとめると以下のようになります。

用法のまとめ
最初に述べたように、四つ共通して使える部分も多いですが、「~に伴って」「~とともに」は一回性の事にも使えること、「~とともに」は「同時に~」という意味でも使えます。

以上、日本語能力試験対策N1文法総まとめ(三修社)などを参考にまとめました。
コメント