「通じて」と「通して」の違いについて考えましょう。
「~を通じて(つうじて)」「~を通して(とおして)」
「通じて」「通して」ともに、「①初めから終わりまで」「②経由して、つながって」の二つの意味で使われます。
- ここでは一年を通じて雨が多い。
- ここでは一年を通して雨が多い。
- 人材会社を通じて求人の紹介を受ける。
- 人材会社を通して求人の紹介を受ける。
多くの場合、ほとんど同じ意味で使うことができます。
「通じる」と「通す」
それぞれの元になる動詞「通じる」「通す」は基本的に意味領域が異なります。
「通じる」は、二つの場所や物事の間が経路などでつながる状態になること

「通す」は一定の経路に従って、一方から他方に目的物を実際に通過させること
- トンネルが通じて反対側が見えた。〔つながる〕
- 通じたトンネルに自動車を通した。〔通過させる〕
- その案については議長は(〇通さない/✕通じない)と思うよ。〔通過させる〕
- その学生は特殊事情があるので、無試験で(〇通した/✕通じた)。〔通過させる〕
- 私の中国語は(×通さなかった・✕通らなかった/〇通じなかった)。〔つながる〕
- 彼は政府の役人と(×通っている/〇通じている)。〔つながる〕
以上のように「通じる」「通す」には意味の重なりはありません。
「通じて」「通して」:「②経由して」の意味でのニュアンスの違い
上のように元の動詞「通じる」「通す」は意味の違いがあります。しかしこれらが、文法化され「~を通じて」「~を通して」と副詞的用法になった際は、前述のようにほとんど同じ意味で使われます。
ただ、細かく見ると元の動詞の意味を「ひきずって」多少ニュアンスの違いが生まれるようです。
一つ目の意味「①初めから終わりまで」の意味ではほぼ同義語ですが、「②経由して」の意味で使う際は、「通じる」は抽象的、概念的な内容になりがちで、「通して」は「実体を通すイメージ」からの連想で具体的、実体的な内容を表現する時に適するようです。(ただし、ほぼ100%入れ替えは可能)
- 言葉を(〇通じて/△通して)気持ちを伝える。
- インターネットを(〇通じて/△通して)世界とつながる。
- ボランティア活動を(〇通じて/△通して)社会との関わり方を学ぶ。
- 先生を(△通じて/〇通して)連絡が入る。
- 仲人を(△通じて/〇通して)知り合った二人。
- 大学事務所を(△通じて/〇通して)彼女の電話番号を聞いた。
「通じて」「通して」ニュアンスの違いまとめ
以下にまとめます。
以上、新装版使い方の分かる類語例解辞典(小学館刊)などを参考にしました。
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