「~なり」と「~が早いか」について〔N1文法〕

「~なり」「~が早いか」

「~なり」と「~が早いか」はいずれも「~するとすぐに」という意味の言葉ですが微妙な差があるようです。違いを考えてみましょう。

「~なり」「~が早いが」

  • 彼は床につくなり、いびきをかき始めた。①

  • 彼は床につくが早いが、いびきをかき始めた。②

上の例文①②では、「~なり」と「~が早いが」の間にあまり差がなさそうです。以下の例はどうでしょうか。

  • 彼女は立ち上がるなり、コップの水を彼の顔にかけた。③

  • 彼女が立ち上がるなり、彼は逃げ出した。④△

  • 彼女は立ち上がるが早いが、コップの水を彼の顔にかけた。⑤

  • 彼女が立ち上がるが早いが、彼は逃げ出した。⑥

③④⑤⑥を見ると、どれも正しい文のようですが、④だけ少し違和感があります。

「~なり」は前件、後件の主語は同じ、「~が早いか」は前件、後件の主語は異なってもよい。
ということで、このことは
「~なり」は同一主体による連続動作であって、動作の前後関係は守られる
ということを示します。前件と後件の動作は限りなく近くシームレスに見えますが、同時に起こるはずはないということになります。
これに対し「~が早いか」の次の例文を見ると、
  • 彼女が話し終わるが早いか、聴衆は大歓声で応えた。⑦
  • 魔法使いが呪文を唱え終わるが早いか、王子は蛙に変わってしまった。⑧
  • 刑事はタクシーに乗り込んだが早いか、「前の車を追ってくれ」と告げた。⑨
⑦⑧⑨のような例では、前件動作が完全に終わらないうちに、後件動作が始まっている状況も考えられます。

「~なり」「~が早いか」相違点まとめ

以上を概念的に図示すると以下のようになります。

「~なり」「~が早いか」比較

「~なり」は同一主体の動作であるため、シームレスな連続動作であると言っても、完全に同時、あるいは動作が重なることはあり得ない。「~が早いか」は前件後件が別主体でも良いため、「終わったと完全同時」あるいは一瞬重なることもありうる。
ということになるでしょう。
以上、TRY!日本語能力試験N1文法から伸ばす日本語改訂版(アスク社刊)などを参考にまとめました。
 

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