台所仕事から生まれた言葉を集めました。
後釜(あとがま)
後任者のこと。「県民局長の後釜にすわる」
後釜というのは「かまど(竈)」に残り火があるうちに次の鍋をかけること。そこから前職、前の人の役目を引き継ぐ人を指すようになりました。
・後釜にすわる(据える)
いびつ(歪)
形や関係が歪んでいること。「いびつな人間関係」
「飯(いい)」の「お櫃(ひつ)」つまり炊いたお米を入れる容器を「飯櫃(いいびつ)」といったそうです。この飯櫃の形が楕円形のものが多かった。そこからまず「楕円形」の意味になり、その「ゆがんだ円」の意味が転じて、形状の歪み、さらに正常な状態ではないことを示すようになりました。
たががゆるむ(箍がゆるむ)
能力・気力や組織の規律がにぶる。「厳しい上司がいなくなって一気に組織のたががゆるんでしまった」
たが(箍)は、桶(おけ)や樽(たる)のまわりの部分にはめる、竹や金属で作った輪のこと。たががゆるむと胴の板がゆるみ、ばらばらになってしまうことから。
「たががゆるむ」「たがが外れる」「たがを絞める」など。
杓子定規(しゃくしじょうぎ)
ただ一つの基準ですべてを決めようとするようなやり方で、多くは融通の利かないことを指す。「杓子定規なやり方ではもう通用しない」
「杓子」は、ご飯などを器によそう道具で、昔のものはその柄が曲がっていた(どのようなものであったのかは確認できませんでした)ことから、「杓子定規」は不適切な基準で物事をはかろうとすることという意味になりました。
そこから転じて、適切、不適切を問わず、一つの基準で物事をはかろうとする意味になりました。
胡麻をする
自分の利益のために相手の機嫌をとる。「胡麻をするのも仕事のひとつ」
諸説ありますが、『大言海』では「炒った胡麻をすり鉢の中ですると、べとついて四方にくっつく。そこから人にへつらう意味が生じた」としています。
塩梅(あんばい)
物事の調子・具合。 「ちょうどいい塩梅に晴れてきた」
昔、調味料として使った「塩」と「梅酢」の量が適切であれば「塩梅がよい」という風に言ったようです。そして「えんばい」と読みました。
この言葉と、室町から江戸時代にかけて「うまく処理する」という意味の「安排(あんぱい)」とが混同されて生まれたのが「塩梅(あんばい)」で、広く物事の具合を表すようになりました。
手塩にかける
自分が最初から世話をする。 「手塩にかけて育てた桃ノ木」
「手塩」は昔、それぞれの食膳に添えた少量の塩のこと。(今でいう食卓塩)各自で自分の好みに合わせて、その塩で料理の味を調節した。ここから「自分で面倒をみる」という意味になったという説があります。
切り盛り
物事を処置、取り計らう。「家計の切り盛りをする」
「切り」「盛り」の字の通り、食べ物を包丁で適当な大きさに切って、器に盛り分けるという意味から転じて物事を上手く処理する意味になりました。
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