「やさしい(易しい)」「たやすい」「容易」「簡単」の違い

「やさしい」「たやすい」「容易」「簡単」

 「やさしい(易しい)」「たやすい」「容易」「簡単」の違いについて考えます。

「やさしい」と「たやすい」

「やさしい」は「すぐ(できる・わかる)状態」のこと。「たやすい」は「た(接頭辞)+やすい」で基本的に「やさしい」と同義。用法として「その事項を行うのが、すぐ(できる・わかる)状態」であることを示し、「特定の行為」について使われる。
  • 彼の文章はやさしい
  • 彼の文章を理解するのはたやすい
  • 日本語はやさしい
  • 日本語をマスターするのはたやすい
  • この暗号はやさしい
  • この暗号を解読するのはたやすい
やさしい・すぐ(できる/わかる)状態である
たやすいある行為について、すぐ(できる/わかる)状態である。

「たやすい」と「容易」

「たやすい」は比較的単純で規模の小さい行為に使われるが、「容易」は複雑で大きな行為に使われることが多い。
  • 逆立ちなんてたやすい。朝飯前だ。
  • この事件を収拾するのは容易ではない。
たやすい・行為 → 比較的単純で規模の小さいこと
容易・行為 → 比較的複雑で規模の大きなこと

・「容易」は「容易な……ではない」の形で使われることが多い。

「やさしい」と「簡単」

「やさしい」は行為者から見て「すぐ(できる・わかる)状態」であるのに対し、「簡単」は対象そのものが単純であったり、あまり手間をかけていない状態であることを表す。
  • テストは簡単だったので、彼にとってはやさしかった。
やさしい行為者にとって、すぐ(できる/わかる)状態であること。
簡単行為の対象が、単純、または手間をかけていない状態である。
「やさしい」の対義語は「難しい」、「簡単」の対義語は「複雑」

〔参考〕「優しい」と「易しい」

 「やさしい」は「優しい」と「易しい」、大きく二つに意味が分かれますが、語源から見た意味の変遷をまとめました。

  1. もとは動詞「痩す」を形容詞化した「やさし」
  2. 「やさし」の意味は「肩身が狭い(恥ずかしい)」
  3. 「肩身が狭い」⇒人目が気になって痩せるようだという思いから「つつましい、繊細な心遣い」を表すようになり「優しい」につながる。
  4. 「肩身が狭い」⇒「慎み深い態度」⇒くみしやすい、扱いやすいことから「易しい」につながる。
  5. 「易しい」の方が、後になって付け加わった意味のようです。

以下、図にまとめました。

「優しい」「易しい」の語源、成り立ち

「優しい」「易しい」の語源、成り立ち

 以上です。

(以上、違いをあらわす「基礎日本語辞典」森田良行著(角川書店)、新明解語源辞典(三省堂)などを参考(一部、そのまま引用)させていただきました。)

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