「かすか」と「ほのか」の違いについて考えましょう。
「かすか」と「ほのか」の違い
共に微小であることを表しますが、「かすか」は小さい、遠い、弱いという方向で微小であること。「ほのか」はぼんやりしていて印象が薄いイメージで微小であるものを示します。「ほのか」は肯定的な文脈で使うことが多く、「動き」の小ささを示すことができるのは「かすか」だけである。
「五感」と「かすか・ほのか」
五感のいずれを表すかで「かすか」「ほのか」の示す内容に違いがあります。以下にまとめます。
例文 | イメージ | |
視覚 | ・かすかに見える | 小さい、遠い |
・ほのかに見える | ぼんやり | |
聴覚 | ・かすかに聞こえる | 小さい |
・(ほのかに聞こえる) | 小さい、心地よい | |
嗅覚 | ・かすかに匂う | 中立 |
・ほのかに匂う | 良い匂い | |
味覚 | ・かすかに甘い | 中立 |
・ほのかに甘い | 好ましい | |
触覚 | ・かすかにざらつく | 中立 |
・ほのかに暖かい | 心地よい |
視覚
左図のように、ぼんやりしてはっきり見えない時は「ほのかに見える」が適しており「かすかに見える」も使えます。しかし右図のように遠い、結果的に小さくてはっきり見えない時は「かすかに見える」の方がしっくりきます。
聴覚
「かすかに聞こえる」「ほのかに聞こえる」はほぼ同じ意味に用いられますが「ほのかに聞こえる」は、本来、柔らかい音、快い音の感じがします。
- ○ 遠くの街の喧騒が かすか に聞こえる。
- △ 遠くの街の喧騒が ほのか に聞こえる。
嗅覚
「かすかに匂う」はどんな匂いかわからないが、「ほのかに匂う」は良い匂いのようなイメージがあります。
例えば「香り」も「匂い」に比べ、大幅に「良い匂い」を表す言葉なので、言葉のイメージとして「中立」→「良い匂い」に並べるとすると。
①かすかな匂い → ②ほのかな匂い → ③かすかな香り → ④ほのかな香り
となり、「かすかな匂い」より「ほのかな香り」の方がかなりいい匂いの印象があります。
味覚
「かすかに甘い」「ほのかに甘い」。甘さの程度は同じぐらいかもしれませんが、「ほのかに甘い」の方はその甘さを良いものと受け止めている感じがします。
触覚
- ○ かすかにざらつく
- ○ かすかに暖かい
- × ほのかにざらつく
- ○ ほのかに暖かい
「ほのかにざらつく」は言いにくく、触覚に関しては「ほのかに」の好ましいものを示す傾向が、強く現れるようです。
「動き」の小ささを表せるのは「かすか」だけ
- ○ かすかな動き
- × ほのかな動き
「かすかな動き」「かすかな振動」は言えますが、「ほのかな動き」「ほのかな振動」は言いません。「動き」の小ささを表せるのは「かすか」だけのようです。
以上です。
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