前回(こちら)の続きです。
朝起きてみると、空は予想に反して上天気、遊覧船もちょうど本日――三月十五日――から運航を開始する由で、朝風呂でつるつるする顔を撫でながら、タクシーで船着場に馳せつける。
浜坂港はどこにでもありそうな山陰の漁港だが、まるで電気屋の店先みたいに沢山電球をぶらさげた漁船がずらりと並んでいるのは、あれがイカ釣りぶねか。
足もとにひたひたと寄せる水に、朝の陽がさして、勢いのいい藻が揺れているのが透いて見える。どこの海を見ても、このごろはまず水を透かして見る。きれいか、濁っているか。昔の人はそんなことは考えもしなかったろうと思う。海の水はどこだろうと澄んでいるのが当たり前だったろう。
それともこれはわれわれが穢い海しか知らなくなって久しいからで、この土地の人には真っ黒な海を想像しろと言っても、無理な注文かもしれない。とにかく、初めて見る日本海の水のきれいなこと、これはやっぱり印象的である。
防波堤ごしに、沖はと見ると、ほとんど波もうねりも見せず、青々と大海原がひろがっている。波荒き灰色の日本海、なんていう概念的な言葉を口にしたら罰が当たりそうな、明るい、のどかな眺めだ。
ところが、これがそうじゃなかった!だまされた。いざ船で沖へ出てみて、やっとわかった。
素人の甘さというか、遠目に望むと近寄って見るとは大違いというか、急転直下、日本海はやはり荒海、という大発見に達したのであった。わからないものだ。
朝起きてみると、空は予想に反して…
早上起来一看,天空与预想相反是个好天,据说恰好游船也是从今天–3月15日开始通航,抚摸着因早晨洗澡而光光的脸,乘出租车奔向码头。
~由:伝え聞いたことの内容、聞き知った事情。「据说」という意味ですが、「由」は、口語ではほとんど使いません。
馳せ着ける:文字通り「急いで到着する」という意味ですが、現在の一般用法では、特に必要があって、例えば緊急の必要性があって、急いで到着する、のような場面でよく使われます。
・(例)事故現場に救援隊が馳せ着ける。
・(例)大臣は激戦区の応援演説に馳せ着けた。
滨坂港是一个好像哪里都见得到的山阴的海港。一字排开一长串好像电器店门前似的挂着很多灯泡的渔船,那是钓墨鱼的船吧?
イカ釣り船(浜坂港)

浜坂港のイカ釣り船(イカを集めるためのランプが一列に連なっている)
足もとにひたひたと寄せる水に、朝の陽がさして…
早上阳光的照射下,透过哗啦啦涌向脚边的水看到长势很好的藻类在摇动。
ひたひた:①静かに揺れ動く水が、繰り返しものにうち当たる様、音を示すオノマトペ。
・(例)波がひたひた(と)船べりをたたく。
派生した抽象的な意味は②(波が押し寄せるように)次第に(あまりよくない)物事がせまってくる様子。
・(例)孤独感がひたひとと胸に迫ってきた。
不管看哪里的海,最近大体都是先要透过水来看的,是干净的还是混浊的。

浜坂港、浅瀬では底が透けて見える
我想过去的人们可能想不到这样的事吧。那时海水不论在哪里清澈透明都是理所当然的。
我只知道脏的海已经很久了。或许对这里当地人说请你想象一下漆黑的海是无理的要求。
無理な注文:絶対不可能、または理不尽な要求。無理よりもさらに不可能性が増します。
・(例)ニワトリに空を飛べというのは無理な注文だ。
・(例)お客様の無理な注文にも、なんとかこたえようとする態度が大事だ。
总之,初次见到的日本海的海水之干净,是留下深刻印象的。
防波堤ごしに、沖はと見ると、…
隔过大堤向大海看去,波与涛全然不见,蓝蓝的大海展成一片。

浜坂港、外海のようす
让人觉得如果用波涛汹涌的灰色这一类一般描写大海的词来形容它的话,那简直要遭报应的。
ところが、これがそうじゃなかった…
但是,并非如此,我们被骗了。一旦乘船走到海里,就终于明白了。
だまされた!:この文脈では、海に騙された。つまり、一見、明るくのどかな日本海の見た目に騙されたということになります。
是外行人的天真,还是远眺与近望的巨大差异呢?急转直下一下子形成了日本海的确是狂暴的海的伟大发现。真是不明白啊!
~というか、~というか
続きます。



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