接尾辞「~めく」「~ばむ」「~じみる」「~ぶる」「~びる」「~っぽい」について比較検討します。
これらはすべて、何らかの性質・様子・印象が“見える・感じられる様子を示すもので、似通った役割を果たします。
用例
それぞれの典型的な用例を見てみましょう。

それぞれに接続する語は比較的限られていますので、混同することはないと思います。
~めく
「最近、とりわけ春めいてきた」
比喩的、文学的な語彙を作る傾向があるようです。
のように、性質が顕在化してくる「変化」を表します。「~の状態になる」「~らしくみえる」などの意味になります。「春めく」「芝居めく」などの他に「ざわめく」「ひしめく」などより強く結合し一つの動詞になったものもあります。
~ばむ
「汗ばむ季節となりました」
「めく」よりも具体的な事象を表現することが多いでしょう。「黄ばむ」などのように、変化が誰が見ても明白というよりは、微妙な変化を示します。「気色ばむ」は、怒りを表情にあらわすことで、怒りが見て取れるという兆候を感知できるという意味合いで、「怒り」には達していない状態でしょう。
~じみる
「おとうさんは最近年寄りじみてきた」
「説教じみた話になってきた」
いかにもそれらしく感じられるという意味で「年寄りじみる」「田舎じみる」「子どもじみる」など、多くは好ましくないことにいいます。後に述べる「~びる」が外面的な変化を中心に言うのに対し、内側からの変化を表します。
「汗じみる」「油じみる」は少しニュアンスが異なり、もとになる「染みる(浸透する)」という動詞の意味が残り「物理的に染みついている」の意味が残った表現といえるでしょう。
~ぶる
「金持ちぶっている人ほど、実は貧乏だ」
ふりをする、そのように見せるという意味で、実際はそうではないという前提があります。「兄貴ぶる」「利口ぶる」「上品ぶる」「偉ぶる」「知ったかぶる」などのように、人を批判する表現になることがほとんどでしょう。
「勿体ぶる(もったいぶる)」はわざと重々しく大げさにふるまうこと。「もったいぶってなかなか話さない」のように、これも良い意味では使いません。
~びる
「彼女は最近大人びた雰囲気になってきた」
「~じみる」が「中からの変化」とすれば、「~びる」は外見上の変化を表します。「大人びる」「古びる」「ひなびる」。経時的な変化を表すので「大人びる」は言えても「子どもびる」はありえません。
「ひなびる(鄙びる)」は、いかにも田舎らしい雰囲気であること、またはそうなること。「故郷の鄙びた風景が好きだ」「古びたソファーに座って本を読む」
~っぽい
「いつまでたっても子供っぽい」(性質)
「最近、忘れっぽくなった」(傾向)
大きく二つの意味があります。そのものではないが、それに近い性質があるさま、(「子供っぽい」「水っぽい」「赤っぽい」「ほこりっぽい」「安っぽい」「荒っぽい」)もう一つは、そういう傾向がある、(「飽きっぽい」「惚れっぽい」「忘れっぽい」)ことを表します。
まとめ(ニュアンスと用例)

以上、中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック(スリーエーネットワーク社)などを参考にしました。




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