読解「なぜ車輪動物がいないのか」本川達雄Ⅱ

青いバックの白い自転車

前回( →こちら )の続きです。

 それにしても、われわれが肉眼で見ている動物たちに、なぜ車輪を使うものがいないのだろうか。これほど便利なものを使わないのには、それなりの理由があるのかもしれない。私の友人のマイク・ラバーベラがサイズの観点から、この問題を論じている。それを紹介しよう。

 まず、陸上を動くものから考えることにする。自動車が便利なことに異論はないであろうが、これはガソリンを食うので、ひとまず置いておくとして、車輪の良さをしみじみ体感できるのは自転車であろう。同じ自分の足を使うのに、こんなにも速く楽に走れるなんて!と、学校にあがる前、一時間十円の貸自転車に心を躍らせたものである。事実、自転車というものは、人間の使う陸上の移動道具のうちで、もっともエネルギー効率の良いものである。自動車もこの点ではかなわない。

 一般的にいって、なぜ車輪がこれほどまで好まれるかといえば、エネルギー効率が大変に良いからである。足を前後に振って歩くやり方では、前に振った足を止めて、逆に後ろへ振りと、振る方向を変えねばならない。そのときにエネルギーがいる。また、足を上げたり下げたりするわけだから、これは重力に対して余計な仕事をすることになる。ところが回転運動ならば、回転方向は一定であり、上下動もない。前後・上下に振り動かす余計なエネルギーは使わなくてよい。だから、あの大変そうに見える車椅子でも、エネルギー的には、歩くよりもよっぽど楽である。

 ただし、これは平らな良い道を行く場合の話で、ちょっとでも凸凹があると、たちまち難渋しはじめる。やはり車椅子が大変なことに違いはない。車椅子と同列に論じては、はなはだ申し訳ないが、息子をベビーカーのっけて押していると、このあたりの大変さが私にも分かる。舗装した道路を押して歩いている分には楽なものだが、階段は担いで昇らねばならないし、砂利道ぬかるみときた日には、もうお手上げだ。車輪は平坦なかたい道では威力を発揮するが、凸凹や柔らかい地面では、ほとんど役に立たないのである。

これはガソリンを食うので、ひとまず置いておくとして、…

「ひとまず」「さしあたり」「とりあえず」

「ひとまず」「とりあえず」「さしあたり」の判別

「ひとまず」「とりあえず」「さしあたり」の判別

ちょっとでも凸凹があると、たちまち難渋しはじめる。

「たちまち」「たちどころに」

「たちまち」「たちどころに」比較絵

「たちまち」「見る間に」「あっという間に」

「たちまち」「見るまに」「あっという間に」まとめ

「たちまち」「見るまに」「あっという間に」まとめ

舗装した道路を押して歩いている分には楽なものだが、…

「分」のいろいろな用法

「分」の意味領域

「分(ぶん)」の意味展開

 

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