読解「庭」渡辺武信Ⅲ

「庭」渡辺武信Ⅲ

前回( →こちら )の続きです。

 思うに庭の大きな効用の一つは、このような治癒効果にあるのではないだろうか。そのために最低限必要なのは、住まいに接して、とくに美しいものや素晴らしい眺めではなくとも、視線を受けとめてくれるに足る私的に囲われた自然の断片が存在することである。それを見て心が和むのは、自然の営みというものが、いかに断片であっても、人間の日常生活の偶発的な喜怒哀楽と独立したリズムを持って動いており、ぼくたちはそのリズムを感じとることで自分の感情をなにがしか相対化できるからではないか、つまりこの場合、視線を受けとめてくれるということは感情を受けとめてくれるというのにほぼ等しい。

 もちろん、こうした効用は庭の外に遠望する風景や公共緑地にもないことはない。しかし、ここが微妙なところで、私的領域である庭とその外とではどうも効きめが違うようだ。それはたぶん、感情を託す側の意識がおのずから異なるからだろう。外の対象に投げかけることによって結果的に治癒する感情の波というものは、たいてい、とりたてて深刻なものとは限らぬにせよ、当の本人にとっては他人に知られずに秘めておきたい、高度にプライベートのものである。

 だから、そうした感情の放電を自分に託すためは、人間は他人の干渉あたう限り免れた、心理的に安全に保護された境地にいる必要がある。そうなると自分のいる場所も、感情を託す対象も私的領域の内にあるほうが有利なので、自宅の庭を眺めている状態が一番適していることになる。不思議なもので、庭の外の草木に感情を託してもそうたやすく他人に悟られるわけはないのだが、人里離れた一軒家の周囲の大自然ならともかく、公園の緑や街路樹が相手では感情を放電するのがちょっと恥ずかしい、というのが、人間の、少なくとも都会人の一般的心理であるらしい。

視線を受けとめてくれるに足る私的に囲われた自然の断片…

~に足る、~に足りない、~に耐える、~に堪えない

「に足る」「に足りない」「に耐える」「に堪えない」まとめ

「に足る」「に足りない」「に耐える」「に堪えない」まとめ

とりたてて深刻なものとは限らぬにせよ…

「仮定条件」と「逆接条件」

仮定条件逆接条件

~としたら
~とすれば
~とすると
~となったら
~となれば
~となると

~としても
~にしても
~にしろ
~にせよ
~たところで
~ようと・ようが

・無人島に何か一つ持っていけるとしたら、何を持っていきますか。
・もし、あの飛行機に乗っていたとすれば、今頃もうこの世にいなかった。
・彼が犯人でないとすると、真犯人は誰なんだ。
・税金が上がるとなれば、国民生活はますます圧迫されるだろう。
・引っ越すとなると、かなりお金がかかる。
・親元を離れるとしても、できるだけ近くにいたい。
・準備がなかったにしても、もう少しまともな報告書を書いてほしい。
・たとえ悪い結果にしろ、全力でやってきたので悔いはない。
・何をするにせよ、心を込めて取り組みたい。
・どんなに急いだところで、もう間に合いっこない。
・どんなに批判されようと、私は平気だ。

いろいろな仮定条件

「~ものなら」「~(よ)うものなら」「~ないことには」「~を抜きにしては」

「ものなら」「ないことには」「を抜きにしては」などまとめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました