「少しも」と「いっこう(に)」の違いを「全然、全く」との比較も含め検討しましょう。
「全く」「全然」「少しも」「いっこう(に)」
打消しの強調
- 彼の話は全くわからない。〇
- 彼の話は全然わからない。〇
- 彼の話は少しもわからない。〇
- 彼の話はいっこうにわからない。〇
上記、四つの文は「わからない」という否定の強調でありすべて成立します。
「全く」「全然」は共に「否定を強調」するもっとも一般的ないいかたで、「全然」の方が口語的です。
また、「全く」「全然」は「全部わからない」であるのに対し、「少しも」わからないとすると、「たとえ少しの部分でもわからない」というニュアンスになります。さらに「いっこうにわからない」とすると、「元からもわからなかったが、今に至ってもわからない」というような、時間的な経過が感じられます。
実体が「ない」
- 金目のものは、全く(全然)残っていない。〇
- 金目のものは、少しも残っていない。〇
- 金目のものは、いっこうに残っていない。×
おなじ「ない」でも、実体としての「物事」がないことを強調する時は、「全く(全然)」、「少しも」は使えますが、「いっこうに」は使いにくいと言えます。
時間経過しても実現しない
- 待てど暮らせど、返事は全く(全然)来なかった。〇
- 待てど暮らせど、返事は少しも来なかった。×
- 待てど暮らせど、判事はいっこうに来なかった。〇
今度は、上記の例文のように時間的経過によっても、実現していないことを強調する場合は「いっこうに」が最もしっくりし、「少しも」は使えないようです。
まとめ
以上をまとめます。
「全く(全然)」「少しも」「いっこう(に)」使用領域まとめ
使用領域のイメージは以下のようになります。

「全く」「全然」「少しも」「いっこうに」イメージ的まとめ
〔参考〕標準テキスト「日本語総合教程第5冊」中の「いっこうに」
それでも、船に乗って、海を思いのたけ味わいたいという気持ちは、いっこうに衰えなかった。幸いフランスにゆくことになり。留学生は船に乗るように、という指示があった。マルセイユまで三十三日間の船旅 ― 考えただけでも嬉しさで気が遠くなりそうだった。 『生きて愛するために』辻邦生
以上、使い方の分かる類語例解辞典(小学館)などを参考にまとめました。
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