「ところ」を含む表現について整理しましょう。
ところ=所、場所
始めて学ぶ「所(ところ)」
日本語教育の標準教科書「みんなの日本語」では初級第8課、つまりかなり初歩の段階から「所(ところ)」を学びます。
A:先週、金閣寺へ行きました。
B:そうですか。どんな所ですか。
A:きれいな所ですよ。 〔みんなの日本語初級第8課練習C3〕
B:そうですか。どんな所ですか。
A:きれいな所ですよ。 〔みんなの日本語初級第8課練習C3〕
広辞苑(第七版)によると、
ところ【所・処】物が在りまた事が起こる(行われる)、あり広がりをもった位置。もとは空間的、後には時間的・抽象的にもいう。
時間的な「ところ」
上の語義の順に日本語学習者も学びます。空間的な所(場所)の意味であった「所」、次の段階では時間的な「ところ」を表現することを学びます。「場所」という概念から「場面」「動作の時間的局面」と意味がやや抽象化されます。
・これから夕食を作るところです。〔動作を始める直前〕
・今、勉強しているところです。〔動作進行中〕
・食事が終わったところです。〔動作が終わった直後〕
・今、勉強しているところです。〔動作進行中〕
・食事が終わったところです。〔動作が終わった直後〕
抽象化の進んだ「~ところを」「~といったところだ」「~ところで」
N1レベルの文法では「~ところを」「~といったところだ」「~ところで」が重要です。これらは先の「局面」「状況」(あるいは「水準」)という概念から派生してきたものと考えられます。
「~ところ(を)」
・お忙しいところ(を)、わざわざお越しいただきありがとうございます。
・お急ぎのところ(を)、失礼いたします。
・お急ぎのところ(を)、失礼いたします。
「を」がつくのは「~の状況を中断させて」という意味合いを含ませて「ヲ格」を用いると理解しておきましょう。
「~といったところだ」
「~といったところだ」①
想定した状況⇒「例示」する意味合いで、「相手の分かりやすいよう、言葉を置き換えたり、例示する」意味で使います。

・役者の浮世絵は、現代でいえばアイドル写真といったところだ。
・子供に人気の食べ物と言えば、カレー、ハンバーグ、玉子焼きといったところでしょう。
・子供に人気の食べ物と言えば、カレー、ハンバーグ、玉子焼きといったところでしょう。
「~といったところだ」②
状況のだいたいのレベルを示すことで、「(程度・数量が)だいたいそのぐらいだ」と「概数」をいいたい時にも「~といったところだ」を使います。
・当駅の利用者は1日、10万人といったところですかね。
・通訳なんてとんでもない。日常会話ができるといったところですよ。
・通訳なんてとんでもない。日常会話ができるといったところですよ。
「~ところで」
そのような「局面」であっても ⇒ 「たとえ~でも」という意味となり「~をしても無駄/期待通りの結果は得られない」と言いたいとき使うようになります。
・今から急いだところで、間に合いっこないさ。
・私が言ったところで、彼女の気持ちは変わらないだろう。
・私が言ったところで、彼女の気持ちは変わらないだろう。
以上、TRY!日本語能力試験N1文法から伸ばす日本語(アスク社刊)などを参考にしました。
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