中国5000日(23)スイカ甘いかしょっぱいか?

スイカ甘いか
これまでの話もそうですが、こちらに書いていることは事実とは異なる部分が多数あります。特に登場する人物に関しては特定の人物を指すことはありません。念のため。

Look Back

 2012年、日本を離れ中国の上海にほど近い町常熟で見事にカムバックを果たした私である。それまでの数年間は”暗黒の時代”とでも言えるかもしれないが、その暗黒の只中で、まじめに書いた文章がある。なぜまじめに書いたかと言うと、それが多くの人の前で発表する原稿であったからだ。だから今でもパソコンの中に残っていた。
 2009年12月、それまで勉強してきた中国語を試すために第4回立命館孔子学院中国語スピーチコンテストに参加した。時を経て読み返してみると、人生後半を自覚した初老男性、前半はお世辞にも成功とは言えないが、とりあえずは大きな破局をかろうじて避けてなんとか生きてきた。そんな人間の、人生後半へのつつましやかな”希望”が描かれているように、感じる。

スイカ甘いかしょっぱいか?

 温室栽培のおかげで、今では1年中スイカを食べることができて、スイカ好きの私にはたまりません。子供の頃、父と一緒にスイカを食べていて、父がスイカに塩をかけて食べるのを見てびっくり仰天。父曰く「こうすると甘さが引き立つんだよ。」聞けば、トマトに砂糖をかけて食べるやら、ごはんにマヨネーズをかけて食べるやら、世の中には奇妙な人たちもいる。まあ、人の好みは各人各様、当人にとっておいしければそれでよしとしよう。

 スイカといえば、なんと言っても最難関はタネ。都合の悪いことに、タネの多いところが一番おいしいところである。私にとってはスイカのタネが玉にキズといったところか。

 人生はスイカを食べるに似たり。そう、最初の部分は格別甘い、タネもないのでなんら気に病むこともない。しかしこの部分というのはあっという間に終わる。食べ進むと必ずタネの部分に突き当たる。ここへ来て初めて人は、スイカを食べつつ同時にタネを取り除かないといけないことに気がつく。いきおいタネ取りに心を奪われ、美味しい果肉を味わうことを忘れてしまう人もいる。しかし、やっとこさタネの無いところに行き着いたと思ったら、実は残りの部分は味気ないところしか残っていなかったりする。
食べかけスイカ
 日本人ですから、私もコツコツ勤勉に生きてきました。大学入試に始まって、就職、結婚、子育て、子供の教育等々、何かにつけて厳しい競争の中、なんとかやってこれました。気がつけば50歳、やっと多少は肩の荷も軽くなったかなと思ったりもします。でも、待てよ? ひょっとして残りの人生はスイカの最後の部分のように味気ないものになるのでは? そう、いろいろやっかいな事は多くても、やはり悩みのタネ多き部分こそ人生の「芯」とでもいいますか。

 私は、50近くになって中国語を一から勉強しました。私にとっては中国語の勉強というのは、人生にちょっとした彩りと、味わいをつけてくれるものになりました。

 先のことはわかりません。しかし、私の後半生には、中国語という調味料が一番合っているのかも知れませんね。

                                  52歳、冬

原文(中国語)

吃西瓜的烦恼
  我爱吃西瓜。托“温室栽培技术”的福,现在我一年到头都能吃到西瓜,真是一件很幸福的事!小时候我跟父亲一起吃西瓜,看到父亲在西瓜上撒了点儿盐,腌着吃,我大吃一惊。父亲却说:“这样吃西瓜更甜呢!”听人说,有的人在西红柿上撒点儿糖吃,有的在大米饭上撒些蛋黄酱吃!太别扭了!但是,人们各有各的嗜好,自己觉得好吃就行吧。
  说起吃西瓜,最大的困难就是怎样除掉瓜子。然而很不巧,西瓜最好吃的地方也正好是瓜子最多的地方。这应该是吃西瓜时美中不足的地方吧。
  人生就像吃西瓜一样,开始吃的时候,很甜,就像我们童年时无牵无挂一样。但这个甜蜜的部分太少了,接着吃下去一定会碰到要除掉瓜子的地方。到了这个阶段人们才知道一边吃果肉一边除掉瓜子是不可避免的。但是,人们忙于除掉瓜子时,常常忘记了品尝最好吃的果肉。其实,到了终于没有瓜子的部分时,剩下的果肉并不是那么好吃的。
    作为一个日本人,我的生活总是忙忙碌碌。高考、就业、结婚、生孩子、教育孩子……都是处在激烈的竞争中,好不容易坚持下来了。50岁的我才觉得,生活上的负担一点点减少了。但同时我也感到疑惑,难道我的生活已经只剩下“没有味道”的部分了吗?回忆过去,我忽然发现,虽然比较麻烦,但“瓜子最多的部分”不就是人生最核心的部分吗?     我差不多50岁才开始学习中文,对我来说,学习中文给我的生活增添了一种色彩、一种味道。以后我的生活还会怎样呢?我想,我会在生活中撒上些叫“中文”的调料快乐地生活下去吧!

 過去、書いたものを残しておくと、意外な発見があったりするものだ。例によってまた寄り道をした。

(続く)

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中国5000日(22)常熟で仕事を始める
まずは、会社の誰よりも早く出勤した。6時半には作業服姿で玄関の掃き掃除を始める。7時過ぎに社員たちがぼつぼつと出勤してくるが、新入りの総経理として一人一人と、朝の挨拶を交わした。この習慣は総経理であった期間中、欠かさなかった。 そういう”日本的”なことはやらない方がいい、と多くの日本人は思っている。掃除はしかるべき低賃金の人間がやるもの

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