「なかなか」(中々)という副詞について分析しましょう。
「なかなか」の意味
「なかなか」(中々)という副詞、日本語教育では初級前半に学びます。標準的テキスト「みんなの日本語」(初級1)では第18課、以下の例文で初出となります。
日本では なかなか 馬を見る ことが できません。
「簡単には馬を見ることができない」という意味になりますが、「なかなか」の意味をどう教えるかによって、中級以降で導入する「なかなか立派だ」というような肯定で受ける場合が理解しにくくなります。結論的に「なかなか」は
という「主観的な意識」のもとで発話されるものということです。そこから「自分の予想を超える高い程度」あるいは「実行実現の困難さ」を表現する時に使うということになります。
それぞれの例文は以下のようになります。
予想を超える高いレベル
- なかなかの出来栄え。
- 彼はなかなかの人物だ。
- なかなか迫力のあるコンサートだった。
実現実行の困難さ
否定で受ける言い方はこちらになります。
- なかなか難しい試験だ。
- なかなか終わらない。
- バスがなかなか来ない。
- 日本ではなかなか見ることのできない品種。
実現実行できるかどうか?
「実現実行」の可能性を問うので、次のような例では少し注意が必要です。
- 彼はなかなかの切れ者だ。〇
- 彼はなかなかの馬鹿だ。×
- 彼女はなかなか美しい。〇
- 彼女はなかなか美しくない。×
簡単に実行可能、あるいはレベルが低い、負の評価には「なかなか」は、なじまないようです。
「なかなか」の使い方
以下の4つです。
①「なかなかの+名詞」
- 彼女はなかなかの勉強家だ
- あの先生ははなかなかの難物だ。
- 宴会ではなかなかのご馳走が出た。
②「なかなか+名詞だ/形容詞・動詞ている」
- なかなか素敵な人です。
- なかなか見事な焼き物ですね。
- なかなか難しい問題だ。
- なかなか骨が折れます。
③「なかなか+動詞+ない」
- 仕事がなかなかはかどらない。
- 病気がなかなか治らない。
- バスがなかなか来ない。
- 謝ってもなかなか許してもらえない。
④述語「なかなかだ」
- 「終わった?」「なかなか」
- 「完成までまだなかなかです」
慣用句「なかなかどうして」
「予想を超えるレベル」であることを強調した口語的表現として「なかなかどうして」をよく使います。
- コンサートの会場設営は、なかなかどうして大変な重労働だ。
- 一時は心配したが、なかなかどうして彼女は立派な成績で大学を卒業した。
以上、時間をあらわす「基礎日本語辞典」森田良行著(角川ソフィア文庫)、三省堂国語辞典(第八版)などを参考にしました。
コメント