みんなの日本語(初級2)第41課 教案Tips

みんなの日本語第41課

みんなの日本語(初級2)第41課の重要ポイントについて解説します。

みんなの日本語初級の授受動詞導入

 第41課は授受動詞が出そろいます。授受動詞は以下のようにとびとびに学習してきました。

授受動詞は初級難関の一つ。過去の内容が定着しているかどうかも確認しながら進めましょう。
第7課「あげます」「もらいます」〔自分(内)が主体になる2つ〕
第24課「くれます」〔相手が主体になる〕、恩恵の授受「~てあげます」「~てもらいます」「~てくれます」
第41課「いただきます」「くださいます」「くれます」恩恵の授受 「~ていただきます」、「~てくださいます」、「~てやります」

まずは授受動詞導入の流れに沿って復習

【第7課】授受動詞は「あげる」「もらう」までは簡単、主体が自分(内)で「私があなたにあげる」「私があなたにもらう」、GiveとTakeですね。

「くれる」「あげる」の三つまでは比較的簡単。しかし

【第24課】ポイント①

 「くれる」という第三の授受動詞が出てきます。主体が相手になることをしっかりと把握します。

あげるもらうくれる

が動作主体(は)、の終点が対象( に)モノ(~を)+授受動詞となることに注意。

  • 王さん は 私 に 鉛筆を くれる。
  • 私 は 王さん に チョコレート を もらう。
  • 私 は 張さん に 花 を あげる。

あげもらい基本文型

【第24課】②ポイント②

恩恵の授受を表す「~てくれる」「~てもらう」「~てあげる」を学びました。理解はたやすく、使うのは学習者にとっては難しそう。

恩恵の授受は、使わなくても意思疎通には支障はない。だからあまり使わないという悪循環がおこります。しかし、日本人は現実の会話の中で非常によく使うので、ぜひ学習者にもいろんな局面で使えるよう指導しましょう。

「くださる」「いただく」「さしあげる」そして「やる」

 さて第41課のないようになります。「さしあげる」も含む上の4つは、「内外」関係に加えて、「上下」関係が加わります。上の「くれる」「もらう」「あげる」の図を平面にし1階部分とし、3階建ての建物に例えると授受動詞7つの関係がよくわかります。

あげもらい2021版

「あげます」の謙譲語「さしあげます」は初級では出てこないようですが、まとめて学習してもよいと思います。

「くださる」は尊敬語。「いただく」「さしあげる」は「謙譲語」

 さらに以下のように表にすると授受動詞の「主体」がはっきりわかります。

尊敬語授受動詞謙譲語
くださるくれる
もらういただく
あげるさしあげる

 「くれる」「もらう」は「相手が主語」だから尊敬語しかありえません。「あげる」は「当方が主語」だから謙譲語しかありえません。当たり前ですがこの理解は大切です。

例文6「くださいませんか」

 「くださいませんか」という尊敬表現も第41課の重要ポイントです。第26課で既習の「いただけませんか」との比較もおもしろいかと考えます。

  • 第26課文型2「生け花を習いたいんですが、いい先生を紹介していただけませんか。」
  • 第41課例文6「新しいコピー機の使い方がよくわからないんですが、ちょっと教えてくださいませんか。」
どちらも丁寧な依頼の表現ですが、「いただけませんか」より「くださいませんか」の方がすこし敬度が高いと言われています。
 以下にご説明します。

依頼~命令 相手を動かす文末表現

 目上の人に何かをやってもらう表現は、言い方に注意が必要なのは言うまでもありません。この種の「依頼」表現を敬意の高い順に並べると、おおよそ以下の順番になります。

依頼表現(命令表現)のまとめ

依頼表現(命令表現)のまとめ〔ていねい順〕

 学習者が丁寧語として慣れた表現「④お手伝いください」では、やや不十分ということになります。「①手伝っていただけないでしょうか?」が使えるのがベストです。そしてその間にある「②いただけませんか?」は「③くださいませんか?」より敬意が高いとされています。

 これはなぜでしょう?

カギは授受動詞の主語の違い

 「いただけませんか」と「くださいませんか」。実は多くの人の感覚ではこの二つ、尊敬の度合いにあまり大きな差がないように思えるかもしれません。

 これについて、わかりやすい解説が「日本語はこわくない」(飯間浩明著)にありました。

 まず基本を整理すると

  • 「いただく」は「もらう」の謙譲語
  • 「くださる」は「くれる」の尊敬語 ですね。
「いただく(もらう)」の主語は「私」、「くださる(くれる)」の主語は「相手」です

敬意と率直さのどちらを重視するか?

ここで次の原則があります
敬意を表す時はなるべく相手を主語にしない、感謝を表す時は、行動してくれた相手を主語にする (「日本語はこわくない」から)

まとめると以下のようになります。

主語基本動詞敬語意味
もらういただく敬意(礼儀正しさを重視)
あなたくれるくださる感謝(率直さを重視)

 つまり「~ていただけませんか」は、相手を主語にせず、敬意を重視しているという点で、敬語としてのランクは上、ただし「~てくださいませんか」は、相手を主語にしている分、敬意という点では一段下がるものの、率直な気持ちを表現できるという点では、目上の人に対して十分使える表現だということのようです。

 そういうプラスマイナスがあるので「~ていただけませんか」「~てくださいませんか」のどちらがていねい?と聞かれるとたいていの日本人は「???」となってしまうのでしょう。

 飯間浩明先生も、目上の人に対して「先生が買ってきてくださった」のように相手を主語にすることが多くあり、その方が「親しみが感じられて悪くない」とおっしゃっています。

以上、「日本語はこわくない」(飯間浩明著)PHP研究所、初級を教える人のための日本語文法ハンドブック スリーエーネットワーク社、などを参考にしました。

 

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