みんなの日本語(初級1)第19課のポイントについて説明します。
「た形」の導入
第19課では「た形」の導入とその文型を学びます。文末の述語のうち「~た(です)」で終わる形を「た形」といいますが、ここでは主に動詞の「た形」を扱います。
「た形」の作り方のルールは第14課の「て形」と全く同じ。「て形」の復習を兼ねて定着をはかりましょう。
「た形」の作り方(=「て形」の作り方)
「~たことがあります」
- 相撲を 見たことがあります。
- 富士山に登ったことがある。
- 私は風邪を引いたことがない。
「~たことがあります」は過去の経験の有無や経歴を述べる言い方です。中国語では「動詞+过」という形式で表現しますが、用法に差があります。以下「~たことがある」と中国語の「動詞+过」を比較してみましょう。
「~たことがある」と中国語の「V过」
「~たことがある」は中国語の「V过」と比較して、いくつかの点で使用範囲が狭まります。
「~たことがある」は経験・経歴だけを表す
「~たことがある」は「V过」より使える範囲が狭いです。「V过」は以下に示すように「経験」と「完成」を表しますが、「~たことがある」は「経験」しか表せません。
你吃过蛇肉吗? | 経験 | 蛇の肉を食べたことがありますか。 |
你吃过饭了吗? | 完成 | ご飯をたべましたか。 |
「~たことがある」は最近のことは表せない
「~たことがある」にはさらに制約があって最近のこと(基準時から隔たりが大きいこと)には使えません。
- 〇 以前、旅行に行った時、蛇の肉を食べたことがあります。
- × 昨日、蛇の肉を食べたことがあります。
〔参考〕「最近の経験」を表現する時は「~ている」を使うことが多いです。
- 〇 彼は昨日、蛇の肉を食べている。
- × 彼は昨日、蛇の肉を食べたことがある。
- 〇 犯人は3日前にここで食事をしている。
- × 犯人は3日前にここで食事をしたことがある。
~たり、~たり
- 休みの日はテニスをしたり、散歩に行ったりします。
- 日本語の授業では、会話を練習したり作文を書いたりします。
「PたりQたりする」は、複数の動作の中から並列的に例を挙げる場合に使います。第16課で既習の「PてQ」との違いをはっきりさせましょう。
- 休みの日はテニスをして散歩に行きます。①
- 休みの日はテニスをしたり、散歩に行ったりします。②
①「PてQ」では「P」と「Q」以外に、することがあるかないかはわかりません。そして「P→Q」の順に事が起きる継起関係があります。②「PたりQたり」ではP、Qが例示されているだけで、他のこともあることを暗示しており、また動作の前後関係はわかりません。
〔参考〕(肯定形)たり、(否定形)たり
「~たり~たり」の形になる、別の使い方に以下のように、同じ動詞の肯定形と否定形を並べる言い方があります。これは「Pする場合とPしない場合がある」という意味になります。
- 彼は授業に出たり出なかったりする。
- 薬を飲んだり飲まなかったりしていると、いつまでも病気が治りませんよ。
~くなる、~になる
- 寒くなりました。
- 12月になりました。
状態変化を表す「イ形容詞くなる」「ナ形容詞(名詞)になる」は、「た形」とは独立させて、たとえば授業の最初の言葉「寒くなりましたね」「暑くなりましたね」「12月になりましたね」などの挨拶に使って提示してもよいと思います。
以上です。
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