「整理」と「整頓」は違うか?

整理整頓

「整理」と「整頓」という言葉について考察します。

「整理」と「整頓」

「整理」は、乱れた状態を整え、要る物と、要らない物を分類し、要らないものを捨てること。「整頓」は要る物を、すぐに取り出せるように整然と並べたりしておくこと。
  • 来月引っ越しするので、部屋の中のものを整理した。
  • (引っ越しが終わって)適当に並べた本棚の本を整頓しなければ…

「整理」は「いらないものを整理」「人員整理」「整理券」等々、不要物を切り捨てることで整えていくというニュアンスがありますが、「整頓」の方に「切り捨てる」イメージはないことから、「すぐ利用できるように整える」という意味になります。

「整理」と「整頓」国語辞書の語釈は?

三省堂国語辞典(第八版)によると、

整理①乱れた状態をきちんと整えること「部屋を整理整頓する」「会場の整理」「気持ちの整理」
②必要のない(人員、組織)を減らすこと。「人員整理」
整頓散らかさないように、きちんと(整える/かたづける)こと

 この語釈から判断すると、通常の「整える」意味の「整理」①は「乱れを整える」だけであり、「整頓」は「整えた結果を維持する」という意味にとらえられます。(つまり減らす意味の「整理」②の対象は「人員」「組織」のようなもので、全く異なる使い方です。)

整理整頓①

整理整頓①

「整理」「整頓」実際に使われている用法

 これに対し、実用法では「そろそろ本を整理しないと部屋が狭くなるなあ」なら、捨てることを暗に含み、「引き出しを整頓する」といえば物を取り出しやすく配置する、という意味になりますね。つまり「整理」「整頓」の意味は冒頭に書いたように、

整理整頓②

整理整頓②

「整理」は、乱れた状態を整え、要る物と、要らない物を分類し、要らないものを捨てること。「整頓」は要る物を、すぐに取り出せるように整然と並べたりしておくこと。
ということになります。

〔参考〕「5S活動」の「整理、整頓」について

5S 「整理」「整頓」はもともと非常に似通った概念を表す言葉です。極論すれば、言葉の進化の過程で、どちらかが消えても別に問題ないのですが、日本で上記のような「整理」「整頓」の意味の分化が生じたのは、1950年代の日本の製造業における「小集団活動」によって再定義が行われた影響が大きいと思っています。「整理・整頓・清掃」を3S、3Sの進化形の「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ(躾)」を5Sと言います。

 会社では効率が問われますので「整理整頓」と一口に言っても「整理とは何か」「整頓とは何か」などはっきりと定義しておかなければ従業員の具体的行動につながりません。

 「整理」も「整頓」ももともと中国語ですが、日本人が日本人らしい用法を加えたと言えるのかもしれません。

〔参考〕中国語の「整理」「整頓」

 参考までに中国語の「整理」は日本語とほぼ同じ意味。「整頓」は規律などを整えるというように精神的な乱れを正すという意味に使うようです。

中国語の「整理」

整理する、順序正しく整える、かたづける(整理桌上的东西:机の上をかたづける)

中国語の「整頓」

(乱れたもの・不健全なものを)正す、立て直す、粛正する(組織・規律や仕事ぶり、生活態度などについていう場合が多い)(整頓規律:規律を整える)

以上です。

 

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