「決して」と「絶対に」の違い

「けっして」「ぜったいに」

「決して」と「絶対に」の違いについて考えましょう。

「決して」と「絶対に」

述部の否定形と呼応して、その否定表現を強調するという意味では似ています。ただし「絶対に」が「いかなる条件や制約があっても、認められない」という絶対的な条件を表し、肯定にも否定にも使うのに対し、「決して」は「何らかの前提条件、心理的な伏線」を内在した表現になり、述部にかならず否定を伴います。
  • その方法は絶対によくない。 ①
  • その方法は決してよくない。 ②

 上の①では「いかなる状況においても100%」という絶対的な否定を表しているのに対し、②では「その方法は確かによくない。しかし現状では他の方法も見つからないのだからやむを得ない」などの言外の意味がありそうです。

  • 絶対にだいじょうぶだ。〇
  • 決してだいじょうぶだ。×

伏線、前提を含む「決して」の例

「決して」は「絶対に」と異なり、単純否定には使いにくい

  • 私は絶対バスに乗らずに歩いて行きます。〇
  • 私は決してバスに乗らずに歩いて行きます。×

「決して」を使った「心理的伏線」を含む例

  • 私は決して外国人ではありません。

 「私は決して外国人ではありません」は、前提として「見た目がどう見ても外国人」「外国語がきわめて上手」などの外国人と思われて当然という前提があって発話される言葉になります。

私はけっして外国人ではありません.

  • 決して心配する必要はありません。

 例えば病気の時に「決して心配しないで」という言葉をかけられるのは、その裏に「きっと良くなりますから」という意味合いが隠れています。

  • おれは決して怪しいもんじゃない。

人相の悪い人 この言葉の裏には「誰が考えても怪しく思えてしまう」あるいは「誰が見ても悪い人相をしている」という前提があります。

  • 私は決してウソはもうしません。

 選挙運動の決まり文句のようになってしまったこの言葉の裏には「みなさん、私を大して信用してはいないでしょうが…」という前提が隠れています。

私はけっしてウソは申しません.

伏線、前提を含まない「ただの否定」に「決して」はつかない

 以下の例(ただの否定)は「決して」をつけられない例です。

  • 私は(×決して)バスに乗らないで歩いて行きます。
  • 明日いますか。/明日は(×決して)いません。

「絶対に」は肯定にも否定にもかかります

 「決して」「絶対に」の違いとしては、その他に「絶対に」は肯定にも否定にもかかるということがあります。

  • 絶対に人に迷惑をかけてはいけない。〇
  • 決して人に迷惑をかけてはいけない。〇
  • 約束は絶対に守らなければならない。〇
  • 約束は決して守らなければならない。×

以上、「思考をあらわす基礎日本語辞典」森田良行著(角川ソフィア文庫)などを参考にさせていただきました。

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