「~ていく」と「~てくる」について考えましょう。
「来る」と「行く」について
まず日本語の「来る」と「行く」について確認しましょう。
「来る」は「話者の発話時点の場所に近づく動き」、「行く」は「話者の発話時点の場所から離れる動き」を表します。
相手に近づく時も「行く」
相手に近づくときも、この原則は変わらず日本語では「行く」ですが、英語や中国語では「come、来」が使われるので注意が必要です。
以上の前提で「~ていく」「~てくる」について考えましょう。「空間的用法」と「時間的用法」に分けて考えます。
「~ていく」「~てくる」の空間的用法
動詞の種類によって三つの用法があります。
移動様式を表す場合
①移動様式を表す | 歩く、走る、飛ぶ、泳ぐ、乗る、送るなど |
- 遅れそうになったので、走ってきました。
- 北京なら飛行機に乗っていった方が便利だ。
これら本来移動を表す動詞の場合、「移動の様式」つまり「どのような手段」で移動したかを表すことになります。
主体の移動でなく、対象が移動する場合もあります。
- 実家から、畑でとれた野菜を送ってきた。
- 夜中に電話をかけてこられたので少し驚いた。
動作の結果状態を伴って移動することを表す場合
②動作の結果状態を伴って移動 | 着る、はく、(眼鏡を)かける、持つ、連れる |
- 今日は寒いので厚手のコートを着ていった方がいいね。
- 通勤用の革靴を履いてきたので、山登りは大変だった。
何かを身に付ける、あるいは携帯する、連れていくというタイプの動詞では、その動詞の行為の結果を伴って移動することを表します。
①②以外の一般的な動作動詞の場合
③その他の一般的動作動詞 | 食べる、買うなどの動作動詞や一部の感覚動詞 |
- お客様のところへ行く前に、お土産を買っていった。
- 外で食べてきたので、ごはんはいらないよ。
「食べる」「買う」などの一般的な動作を表す動詞の場合、その動作の後に生じる移動を表します。
- 夕食時、隣の家からいい匂いがしてきた。
- お寺から鐘の音が聞こえてきました。
などの感覚動詞の場合も、広義にこの分類に入る用法といえます。
「~ていく」「~てくる」の時間的用法
今(基準時)より以前から今(基準時)までの推移を「~てくる」、今(基準時)から以後への推移を表す場合には「~ていく」が使われます。
- 今まで頑張ってきたのだから、これからも頑張っていきましょう。
- 積もった雪も、昼から太陽が出てとけてきた。
- 我々は常に変わっていかなければならない。
以上です。
コメント