「全然」「なんら」「少しも」の違いについて考えましょう。
「なんら」
「なにら」の音便、打消しをともない「何一つ…ない」で、主体が対象から「動作・作用」を受けたり、及ぼしたりということがまったくない状態を指します。「なんら」あるいは「なんらの」の形で使います。
- なんら報告を受けていない。
- なんら影響をうけない。
- なんらの処置も施さない。
この用法では「全然」「少しも」も使用可能です。微妙なニュアンスの差としては「なんら」は、対象の個々のすべて(aも、bも、cも、dも…)、「全然」は対象全部まとめて、「少しも」は対象の全体像はさておき、ほんの僅かも、という感覚的な差があります。(下図参照)
「全然」、「少しも」は対象がない場合も表せる
「全然」「少しも」については、対象を前提としないそれ自体の状態・動きにも使えます。例えば、
- 雨は(全然/少しも)降らない。
- 気温は(全然/少しも)上がらない。
この例では「雨はなんら降らない。×」「気温はなんら上がらない。×」は言えません。
「全然」は「否定の強調」に使える
「全然」はほぼ100%否定する述部を持つ表現の否定をさらに強調する使い方ができ、「少しも」にはこの「否定の強調」する用法はありません。
- 全然、見当ちがいです。(×少しも見当ちがいです。)
- 全然、気に入らない。(△少しも、気に入らない。)
- 全然、だめだ。(×少しもだめだ。)
まとめ
以上まとめます。
対象から主体への動作・作用 | 主体そのものの動作・作用 | 否定の強調 |
なんら影響なし | — | — |
全然影響なし | 全然降らない雨 | 全然見当ちがい |
少しも影響なし | 少しも降らない雨 | — |
〔参考〕「全然(うしろが肯定)」の言い方
最近では「全然楽しかった」「全然いいんじゃない」という風に後ろが否定でない言い方が若者中心になされています。このような言い方は、実は新しい用法ではなく、昔からあったようです。以下、最新の「三省堂国語辞典第八版」からの引用です。
以上です。
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