定評ある日本語テキスト「みんなの日本語」(中国語版「大家的日語」)を現場で教えてきました。このシリーズでは「みんなの日本語」教案作成上のヒントについてまとめます。
「みんなの日本語」の構成
ひらがなとカタカナはなんとか覚えました。そんな外国人に「みんなの日本語」を使って日本語を教えてください。そう言われテキストを手にした人は第1課の内容を見て、驚くはずです。
少し、難しいのでは…?
実は「みんなの日本語」というテキストは順を追って教えていくと、学習者にとっては、いきなり難しい表現が出てきて、教える側を戸惑わせるような箇所が出てきます。しかしこれは、
それが「みんなの日本語」というテキストの特長の一つでもあるのです。
あえて難しい箇所が挿入されている
具体的に、例えば「第一課」の会話「はじめまして」には
「みんなの日本語」の構成(まとめ)
たとえば上記で例を挙げた第1課の「会話」部分の「こちら」「から来ました」などの表現については、下図のように第3課、第4課で重点事項として教える内容が、「予告編」のように第1課に出現している、ということなのです。
「みんなの日本語」初級 第1課で教える最も大切なこと
まずは「AはBです」「A=B」
第1課で教えることはたった一つ。
だけでよいと私は思っています。(もちろん、「…は~です」という日本語は、かならずしも「…=~」ではないことは、私たち日本人は知っていますが、まずは単純化して「A=B」は「AはBです」と教えようということです。)
例えば私は以のように板書することがあります。
日本語の特徴を感じ取れるように
たとえば「わたしはアメリカ人です」は「I am an American.」。「わたし=I」「アメリカ人=American」に対応することは直感的に理解できます。
- 「AはBです」の「です」は英語の「am」中国語の「是」に相当すること。(つまり日本語の基本語順が英語、中国語と違うということ)
- 「AはBです」の「は」という文法成分は英語にも中国語にも存在しないこと。
です。
まずは「AはBです」を徹底マスター
あとは「AはBです」の文型を使って練習を続けます。私は中国の大学で教えていますから、第1日目ではちょっと難しいですが、できるだけ早い時期に以下のような15秒自己紹介ができるように指導しています。
「みんなの日本語」初級 第1課で教えるその他のこと
第1課「AはBですか?」「AはBじゃありません」
「AはBです」が定着したら、疑問文は「か」をつけるだけ、否定「AはBじゃありません」などは比較的簡単に覚えてもらえます。
以下は「AはBじゃありません」の導入板書例です。
「~さん」を自分につけないように
忘れがちなのは敬称「さん」はMr.Ms.、自分の名前に「さん」をつけてしまわないように注意させましょう。
- あなたはマイク・ミラーさんですか。
- はい、(わたしは)マイク・ミラー(✕さん)です。
「さん」と「ちゃん」
これも板書しておきましょう。
「限定呼称」と「一般呼称」
もう一つ、「ミラーさんは会社員です」「ミラーです。IMCの社員です」という「会社員」「社員」という二種類の呼称が出てきますが、
- 「社員」「学生」のような呼び方を「限定呼称」
- 「会社員」「大学生」のような呼び方を「一般呼称」
- 「私はIMCの社員です。」「私は会社員です。」
- 「私は南通大学の学生です。」「私は大学生です。」
違い、を理解させましょう。
〔参考〕中国語と違う部分に注意
「学生」「大学生」は書けば日本語と中国語で同じですが、違う部分も!
「限定呼称」と「一般呼称」まとめ
特に日本では中学生、高校生を正式には「生徒(せいと)」と呼ぶので注意しましょう。(一部学生と呼ぶ場合もあります)
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