みんなの日本語(初級1)第1課 教案Tips

みんなの日本語初級1第1課教案Tips

定評ある日本語テキスト「みんなの日本語」(中国語版「大家的日語」)を現場で教えてきました。このシリーズでは「みんなの日本語」教案作成上のヒントについてまとめます。

「みんなの日本語」の構成

 ひらがなとカタカナはなんとか覚えました。そんな外国人に「みんなの日本語」を使って日本語を教えてください。そう言われテキストを手にした人は第1課の内容を見て、驚くはずです。

少し、難しいのでは…?

 実は「みんなの日本語」というテキストは順を追って教えていくと、学習者にとっては、いきなり難しい表現が出てきて、教える側を戸惑わせるような箇所が出てきます。しかしこれは、

それが「みんなの日本語」というテキストの特長の一つでもあるのです。

あえて難しい箇所が挿入されている 

具体的に、例えば「第一課」の会話「はじめまして」には

山田:佐藤さん、こちらはマイク・ミラーさんです。
ミラー:初めまして。マイク・ミラーです。アメリカから来ました
 とあります。指示詞の「これ、この」導入の前に「こちら」が出てくる。助詞の「から」は何とかなっても、最初に出てくる動詞が過去形の「来ました」とくると、さあ、これを理解させるには大変だ!ということになります。
 しかし、心配ご無用です。実は「みんなの日本語」というテキストは
後で学ぶ内容が「予告編」のような形で前の課に出てくるように作られている
のです。ですからその課で学ぶ内容(各課の最初に出てくる文型)以外の文法項目については軽く触れていくだけでよいのです。
 たとえば「こちらは」はジェスチャーで示すだけ、「アメリカから来ました」なら、以下のような図を簡単に板書しておけば意味はわかっていただけます。そしてそれ以上の説明は必要ないのです。

「~から来ました」は板書で示そう

 
 学習者には「この表現は何だろう。よくわからないな。」と頭に残つだけでよいのです。その後の学習で「そうか、わかった!」という経験を繰り返すことで上達を実感していただくことになります。

「みんなの日本語」の構成(まとめ)

 たとえば上記で例を挙げた第1課の「会話」部分の「こちら」「から来ました」などの表現については、下図のように第3課、第4課で重点事項として教える内容が、「予告編」のように第1課に出現している、ということなのです。

予告編方式の「みんなの日本語」というテキスト

「みんなの日本語」は「予告編だらけ」、教材の特徴を理解して教案を考えよう!

「みんなの日本語」初級 第1課で教える最も大切なこと

まずは「AはBです」「A=B」

 第1課で教えることはたった一つ。

「…は~です」「A=B」

 だけでよいと私は思っています。(もちろん、「…は~です」という日本語は、かならずしも「…=~」ではないことは、私たち日本人は知っていますが、まずは単純化して「A=B」は「AはBです」と教えようということです。)

 例えば私は以のように板書することがあります。

「私は~です」導入板書例

日本語の特徴を感じ取れるように

 たとえば「わたしはアメリカ人です」は「I am an American.」。「わたし=I」「アメリカ人=American」に対応することは直感的に理解できます。

しかし、ちゃんと指摘しておかないと「は」=「am」(中国語なら「是」)だと理解してしまう学習者が多いのです
 上記の板書で理解してもらいたいことは2つ
  • 「AはBです」の「です」は英語の「am」中国語の「是」に相当すること。(つまり日本語の基本語順が英語、中国語と違うということ)
  • 「AはBです」の「は」という文法成分は英語にも中国語にも存在しないこと。

です。

まずは「AはBです」を徹底マスター

 あとは「AはBです」の文型を使って練習を続けます。私は中国の大学で教えていますから、第1日目ではちょっと難しいですが、できるだけ早い時期に以下のような15秒自己紹介ができるように指導しています。

「みんなの日本語」初級 第1課で教えるその他のこと

第1課「AはBですか?」「AはBじゃありません」

 「AはBです」が定着したら、疑問文は「か」をつけるだけ、否定「AはBじゃありません」などは比較的簡単に覚えてもらえます。

 以下は「AはBじゃありません」の導入板書例です。

私は~じゃありません

「私は~じゃありません」導入板書

「~さん」を自分につけないように

 忘れがちなのは敬称「さん」はMr.Ms.、自分の名前に「さん」をつけてしまわないように注意させましょう。

  • あなたはマイク・ミラーさんですか。
  • はい、(わたしは)マイク・ミラー(✕さん)です。

「さん」と「ちゃん」

 これも板書しておきましょう。

敬称「さん」と「ちゃん」

敬称「さん」と「ちゃん」

「限定呼称」と「一般呼称」

 もう一つ、「ミラーさんは会社員です」「ミラーです。IMCの社員です」という「会社員」「社員」という二種類の呼称が出てきますが、

  •  「社員」「学生」のような呼び方を「限定呼称」
  •  「会社員」「大学生」のような呼び方を「一般呼称」
  • 「私はIMCの社員です。」「私は会社員です。」
  • 「私は南通大学の学生です。」「私は大学生です。」

 違い、を理解させましょう。

〔参考〕中国語と違う部分に注意

 「学生」「大学生」は書けば日本語と中国語で同じですが、違う部分も!「限定呼称」と「一般呼称」

「限定呼称」と「一般呼称」まとめ

 特に日本では中学生、高校生を正式には「生徒(せいと)」と呼ぶので注意しましょう。(一部学生と呼ぶ場合もあります)

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