時をあらわす「に」をつけるか、つけないかについて考えましょう。これについては以前厳密に分類して考察した記事があります。
今回はもう少しシンプルにまとめ直します。
特定できる時の場合には「に」をつける
- ○「3日に行きます。」は正しく、✕「3日、行きます。」はまちがい。
- ✕「明日に行きます。」はまちがいで、○「明日、行きます。」は正しい。
「2日」も「明日」も同じく時を表す言葉なのに、なぜ「2日」にだけ「に」をつけて、「明日」には「に」がつかないのでしょうか?
これについては、基本的に「絶対的」な時であるか、「相対的」な時であるかが判断基準になります。
「絶対的」な時と「相対的」な時とは?
下の絵をごらんください。例えば、今日2日だとすると「明日」は3日。しかし今日が1日だとすると「明日」は2日。今日が3日なら「明日」は4日になります。このように「明日」という時間は発話の時間が変われば変わってしまう「相対的」な時ということになります。
これに対し「3日」は今日が1日であろうと、2日であろうと同じ日です。発話の時に関わらず、特定の日を指します。つまり「絶対的」な時といえます。
「土曜日、働きます」と「土曜日に働きます」
「土曜日、働きます」「土曜日に働きます」のように、両方言える場合というのは意味が少し異なります。「に」のつかないのは相対的な時間、「に」のつくのは絶対的な時間、ですがこれは以下のように解釈しましょう。
「に」のつかない「土曜日、働きます」は「話者の頭の中で絶対的な特定の土曜日」ではないと考えているということです。「いずれの土曜日においても」つまり、私の仕事は土曜日は出勤日なんです、ということを言っていることになります。
これに対して「土曜日に働きます」は本来土曜日は休日である人が、何らかの理由で(例えば)「今度の土曜日、休日出勤して働きます」ということを言っていることになります。
「みんなの日本語」初級第5課の難問
上記の判別法だけで考えると以下の問題がわかりにくくなります。
問題 以下のように、場所、時間を指定されて、《いつ「…」に行きますか?「○○」(に)行きます。》の形式に書き換える問題です。考えてみてください。
- さくら大学(9月14日)
- アメリカ(来年の3月)
- 広島(来月)
- 病院(今週の水曜日)
1.3.についてはこれまでの説明で問題ないでしょう。1.9月14日は「絶対的」な時なので、いつさくら大学に行きますか。9月14日に行きます。3.来月は「相対的」な時なので、いつ広島に行きますか。来月行きます。となります。
問題は2.4.ですが「来年の3月」「今週の水曜日」はそれぞれ「今年の発話か来年の発話か」「今週の発話か来週の発話か」によって示す時が違うので「相対的」な時であり、「に」は不要か、というとそうではありません。2.いつアメリカに行きますか。来年の3月に行きます。4.いつ病院に行きますか。今週の水曜日に行きます。が正解です。
これについて次のように考えましょう。
「来年の3月」は「来年」という限定された時間における「3月」、「今週の水曜日」は「今週」という限定された時間における「水曜日」とすれば、共に一義的(つまり絶対的)に決まる時と判断できます。
「来年の3月」における「3月」は「来年」という限定を加えることによって「絶対的」な時、となり、「今週の水曜日」における「水曜日」は「今週」という限定を加えることによって「絶対的」な時になる、ということです。
以下のルールとなります。
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