「知る」と「分かる」の違い

「知る」と「分かる」

よくある誤用例「私には知りません」??

  • 中国の習慣を知らない日本人
  • 中国の習慣をわからない日本人
  • 知っていることは何でも言ってください。
  • わかっていることは何でも言ってください。

上に示すように「知る」と「分かる」は多くの場合、同じような意味を表します。では次の例はどうでしょうか。

  • × それは 私には 知りません。
  • ○ それは 私には わかりません。

「それは私には知りません」は誤用になります。それは「知る」という動詞が

対象に向けられた知覚作用
を示すことによります。ですから「私には」という話者に向けられた動作として使えず、「私は知りません」あるいは話者にとっての可能性を問う「ことができる」の形式にすれば正用になります。
  • × それは 私には 知りません。Ⅰ
  • ○ それは 私は 知りません。Ⅱ
  • ○ それは 私には 知ることができません。Ⅲ

「知る」と「分かる」

「知る」と「分かる」の本質的な差異について考えましょう。

  • 「知る」:外部の「情報・体験」を把握する行為、自分の脳内にInputすること
  • 「分かる」:Inputした「情報・体験」を判断可能な形式に把握し直すこと

イメージで示せば、以下のような違いがあります。

「知る」と「分かる」の違い

「知る」と「分かる」の違い

「知る」と「分かる」の動作時間の差

 上の絵でわかるように「知る」は瞬間動作であるのに対し「分かる」は必ずしも「瞬間」で終わる動作とは限りません

 実際日本語を勉強する皆さんが、運用する時にこの差は重要です。会話例で考えましょう。

  • 「知っていますか?」
  • ○「はい、知っています」○「いいえ、知りません」
  • ×「はい、知ります」×「いいえ、知っていません」
知る:瞬間プロセス

知る:瞬間プロセス

「知る」という行為を境にして「知らない」という状態が「知っている」という状態に変化するだけなので「知っている」と「知らない」以外の回答はありません。

これに対し「分かる」の方は

  • ○「分かりますか?」
  • ○「はい、分かります」○「いいえ、分かりません」
  • ○「分かっていますか?」
  • ○「はい、分かっています」○「いいえ、分かっていません」
「分かる」プロセス

「分かる」動作のプロセス

例えば何かを説明して相手にその理解を尋ねるような時には短い思考プロセスの結果を「分かりますか?」と問いかけ、答える方は「分かります」「分かりません」と答えます。

相手の知識を問う場合や、比較的長い思考プロセスが必要な場合には、「分かっていますか?」との問いが可能で、分かるプロセスが完了していないという意味で「(まだ)分かっていません」、すでに分かる動作が完了しているという意味で「分かっています」と言えます。

以上、外国人の誤用から分かる日本語の問題 森田良行著 明治書院刊、などを参考にさせていただきました。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました