「いろいろ」と「さまざま」
- 世の中にはいろいろな人がいる。
- 世の中にはさまざまな人がいる。
「いろいろ」と「さまざま」はどちらも使える場合が多いです。が、より好ましい方がある場合も多いのです。
- ○ 日本にはいろいろなカゼ薬がある。
- △ 日本にはさまざまなカゼ薬がある。
- △ カゼ薬はカゼのいろいろな症状の緩和に効果がある。
- ○ カゼ薬はカゼのさまざまな症状の緩和に効果がある。
「日本にはいろいろなカゼ薬があり、カゼ薬はカゼのさまざまな症状に効果がある。」
上のように言った方がより自然な日本語のような気がします。「いろいろ」と「さまざま」のニュアンスの差を探りましょう。
「いろいろ(色色)」のニュアンス
「いろいろ」は、異なるものの全体に対して同時に注意が向いている状態です。そのため、客観的に多いということを表しています。
「いろいろ」:全部まとめて数が多い
つまり「日本にはいろいろなカゼ薬がある」と言った時、「種類が多いんだ」ということが伝えたいことで、個別のカゼ薬の名前などはあまり重要ではない。
「さまざま」(様様)のニュアンス
これに対し「さまざま」は、異なるものの相互の違いに目が向いている状態です。そのため、多様性が確認されています。
「さまざま」:一つ一つ違っていて数が多い
つまり「カゼにはさまざまな症状がある」と言った時、せきも出る、熱も出る、悪寒もする…、という個々の症状が意識されつつ発話される傾向にあるということです。
全体の「いろいろ」個別の「さまざま」
「いろいろ」と「さまざま」は共に数が多い状況を表現するのですが、例えて言うと「いろいろ」は全部にまとめて照明が当たっているというイメージであるのに対して、「さまざま」の方は個別にスポットライトが当たっているというイメージです。
英語で言えば、意味は異なりますが、”ALL” と ”EVERY” の違いをイメージするとよくわかるかもしれません。
まとめ
以上まとめると以下のようになります。
「いろいろ」は客観的、「さまざま」は多様性を認める、という観点から「さまざま」の方がやや積極的に多いこと(多様性)を肯定する文脈で使うような気がします。
- いろいろな意見を言う人がいるけれど、気にせず自分で決めた道を行けばいい。
- 仲間のさまざまな意見にしっかり耳を傾けてから、最後は自分で決めよう。
以上、違いをあらわす基礎日本語辞典 森田良行著 角川ソフィア文庫、使い方の分かる類語例解辞典 小学館、等を参考にさせていただきました。
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