けっこう(結構)は漢語
日本人が「結構です」と言っても肯定なのか否定なのかわからない、と今では日本的表現の代表のように言われる「けっこう(結構)」ですが、もともとは漢語(中国語)です。
结构(构は構の簡体字)は”Structure”という意味で、中国語では建物の構造、分子構造、会社などの組織図などを表現する時に”结构”を使います。
结构 → 立派、準備 → OK!!
この结构という言葉、日本へ来ると、もともとの建築物の構造を示す意味から発展して、その「構造」を作るための「計画」「準備」という意味に拡張され、さらにその「計画」「準備」をほめる「立派だ」「よろしい(OK!)」という意味に展開していきます。
けっこう(結構)の意味について
日本語になった「けっこう(結構)」の意味について整理していきましょう。まず「名詞」「形容詞」「副詞」の三つの品詞として使用されていることに着目しましょう。
けっこう(結構)は名詞、形容詞、副詞
- 名詞の「けっこう」:もともとのStructureの意味
- 形容詞の「けっこう」:充足している様子の意味
- 副詞の「けっこう」:思ったより良いの意味 となります。それぞれの典型的な例文で意味を確認しましょう。
けっこう(結構)「充足」は相手?それとも自分?
さて、名詞、形容詞、副詞の中で、名詞の「結構」つまり上記の「結構に趣向を凝らす」というような言い方は現在あまり使いませんのでとりあえず省いておきましょう。
形容詞として”充足している様子”を表す場合は、相手の状況を形容するか、話者(自分)の状況を形容するかで意味が異なってきます。相手はヨイショして持ち上げる、自分は謙遜して満足ですと言うのが基本です。
つまり、同じ「充足」状態を形容するにしても、相手のことを言う場合は「悪い点は全くない」と言う風に相手を持ち上げた意味(結構なお住まいですね)、または相手との取引に関わる寛容(支払いは後でも結構です)の意味になるのに対し、自分の状態を形容する場合は「もう、結構」のように自分は満足しましたという意味に主に用いられるのです。
これに対し副詞用法の「けっこう」に関しては、話者の感情・意見を交えずに客観的に予想以上であったことを表すようです。
けっこう(結構)の4つの意味
以上整理すると、日本語の「けっこう(結構)」については、”Wonderful(不错)”、”No problem(没问题)”、”No thank you(不需要)”、”Quite(没想到)”の4つの意味で使われるという風に理解しておけばよいと思います。
”いいえ(No)”と言いにくい日本語
「結構」の4つの使い方の中でも、”No thnak you”の意味で使われる「けっこうです」が大切です。できるだけ相手を傷つけずに”No”の意思表示をしたいという日本人の感性がこもった表現の一つとして「みんなの日本語」では形容詞導入と同時に「けっこう」を勉強します。
- 山田友子:コーヒー、もう 一杯 いかがですか?
- マリア・サントス:いいえ、けっこうです。 みんなの日本語第8課
- ミラー:あのう、木村さん、クラシックのコンサート、いっしょにいかがですか。
- 木村:いいですね。いつですか。
- ミラー:来週の金曜日の晩です。
- 木村:金曜日ですか。金曜日の晩はちょっと……。 みんなの日本語第9課
初級の初期にでてくる会話表現です。使いこなしは難しいですが、ぜひマスターしてほしい部分です。
「大丈夫」の新しい意味
余談になりますが、結構と同じ漢語の「大丈夫」も中国語は「立派な男性」の意味ですが日本では”No problem”という意味。しかし最近では一部”No thank you”の意味で使われるようになっているようです。
(以上、日本人が気づいていないヘンな日本語 アスコム刊、新明解国語辞典第八版などを参考にさせていただきました)
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