「のぼる」「あがる」「くだる」「おりる」「さがる」について

UP and DOWN
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「のぼる」と「あがる」

 まず最初に「のぼる」と「あがる」の違いを確認しましょう。

「継続動詞」と「瞬間動詞」

 復習になります。動詞には「継続動詞」と「瞬間動詞」というものがあります。例えば「走る」は継続動詞、「(電気を)つける」は瞬間動詞です。継続動詞、瞬間動詞の違いは「~ている」の形に直すと意味上の違いがでてくるのでわかります。

「走っている」と「(電気が)ついている」

「走る」継続動詞と「つく」瞬間動詞

 「走っている」のは今まさに動作が継続中(~ing)であることを表していますが、「ついている」の方は「(電気が)つく」という瞬間動作の結果が残存していることを表します。

「のぼる=継続動詞」「あがる=瞬間動詞」

 「のぼる」と「あがる」を上の判別方法によって「~ている」の形にしてみると「のぼっている」は動作の進行、「あがっている」は結果残存を表しているので、「のぼる」は継続動詞、「あがる」は瞬間動詞であることがわかります。

「のぼる」継続動詞、「あがる」瞬間動詞

「のぼる」継続動詞、「あがる」瞬間動詞

つまり「のぼる」「あがる」のそれぞれのイメージを図示すると以下のようになります。

「のぼる」と「あがる」

「のぼる」と「あがる」

 次に「のぼる」「あがる」の反対語を確認しましょう。

「のぼる」と「くだる」

 「坂をのぼる」⇔「坂をくだる」、「のぼり列車」⇔「くだり列車」ですから、

「のぼる」と「くだる」

「のぼる」と「くだる」

「あがる」⇔「さがる」「おりる」

「温度があがる」⇔「温度がさがる」、「水位があがる」⇔「水位がさがる」のような対応関係と、「二階にあがる」⇔「一階におりる」、「舞台にあがる」⇔「舞台からおりる」の対応関係があります。

「あがる」「さがる」「おりる」

「あがる」「さがる」「おりる」

「あがる」は基本的に到達点を意識した動詞です。

「さがる」と「おりる」は同じ高→低への移動なのですが、「さがる」が起点に重点が置かれ、「おりる」は到達点に重点が置かれる点が違います。

上のこと、つまり起点(スタートポイント)に意識があることから「さがる」は「肩がさがる」「後ろにさがる」「熱がさがる」など初期変化を表現できます。「おりる」は「一階におりる」「遮断機がおりている」のように、動作の最終結果を表す場合が多いようです。

「のぼる」⇔「くだる」、「あがる」⇔「さがる」「おりる」

 以上まとめると、

「のぼる」⇔「くだる」、「あがる」⇔「さがる」「おりる」

「のぼる」⇔「くだる」、「あがる」⇔「さがる」「おりる」

「坂をくだる」と「階段をおりる」??

 ここまでまとめて少し疑問がわきました。上の図の左下「くだる」の例に「階段をくだる、坂をくだる」と書きましたが、通常日本人は「階段をくだる」より「階段をおりる」の方を多用します。まとめると、

○ 坂をおりる○ 坂をくだる○ くだり坂
○ 階段をおりる× 階段をくだる○ くだり階段

 習慣的なものかとも思えますが、これまでご説明してきたことを総合して考察してみると、階段はマクロにみると坂道と同じで「くだる」もの。しかし実際に階段を”くだって”いる人本人の視線で見れば、たとえば10段の階段があれば、「おりる」という到達点を意識した小さな動作を10回繰り返すというこなので「階段をおりる」という言い方になるのでは、という理由づけもあながち間違いではないような気がします。

「くだり階段」と「階段をおりる」

「くだり階段」と「階段をおりる」

(以上、基礎日本語辞典 森田良行著 角川書店刊、似ている日本語 佐々木瑞枝著 東京堂出版 などを参考にさせていただきました。)

 

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