共感覚的比喩
例えば次の三つの表現
- 視覚で見る「部屋」を視覚表現「明るい」で形容
- 味覚で味わう「キャンディ」を味覚表現「甘い」で形容
- 触覚で触る「毛布」を触覚表現「柔らかい」で形容、しています。
これに対して後の②の3っつは
- 聴覚で聞く「声」を視覚表現「明るい」で形容
- 聴覚で匂う「香り」を味覚表現「甘い」で形容
- 聴覚で聞く「音」を触覚表現「柔らかい」で形容、していますね。
例えば音を聞いて色彩を感じるという特殊な能力をもった人がいますが、そういう能力を「共感覚」と言います。
実は言葉の世界では、特殊能力がなくても、皆当たり前のようにこのような、つまり上にあげた「明るい声」「甘い香り」「柔らかい音」など五感の中の別の感覚を表す形容詞を使う言い方、つまり共感覚的表現が使われていることがわかります。
これらも一種の「比喩」なので「共感覚的比喩」などと言うこともあります。
共感覚的比喩の階層性
「明るい声」のような共感覚的比喩には、ある程度ルールのようなものがあります。
例えば次のように共感覚は一方通行である場合が多いのです。
- 〇:甘い色(味覚→視覚)、×:まぶしい味(視覚→味覚)
- 〇:刺すような声(触覚→聴覚)、×:うるさい手触り(聴覚→触覚)
五感間の修飾-被修飾関係
五感の共感覚について研究し、修飾、被修飾の関係をまとめたものとしてこれまでに以下のようなものが提案されています。
矢印の意味は「(感覚A)→(感覚B)」と矢印でつながれている感覚動詞は「感覚A」によって「感覚B」を形容(修飾)できるという意味です。
例を付け加えた方が分かりやすいかもしれません。
矢印に逆行する表現
- からい手触り
- まぶしい辛さ
- 静かな表面
などは、使えそうにありませんね。
おもしろい共感覚的比喩を探そう!
逆に矢印の向きが既存のものならば、今まで使われていないユニークな表現が可能かもしれません。以下をご覧ください。
五感を五色に色分けしてあります。
上の図の赤点線枠内に注目してみましょう。これはどう見るかというと、例えば一番左「色」ならば、先の修飾-被修飾の関係図から「触覚(灰)」と「味覚(青)」で修飾が可能ということを意味しています。
だから上の形容詞リストから触覚では「硬い色」「刺すような色」「すべすべの色」、味覚では「甘い色」「すっぱい色」「苦い色」などが、おもしろい比喩表現として使える可能性はあるのではないでしょうか。
もちろん「すべすべの色」「すっぱい色」などとは通常は言いません。しかし「からい手触り」「まぶしい辛さ」などに比べれば、なんとなく使えそうな表現だと思われませんか?
(以上、「なにげにてごわい日本語」すばる舎、などを参考にさせていただきました。)
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