日本語は拍(はく)が大切
たしか井上ひさしさんが言っていたと思います。日本語は、単なる音声として聞くと「ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッ……。」という風に音がぶつ切れになったように聞こえるらしいです。
その原因は日本語は「同じ長さの拍」(等拍リズムといいます)を単位として話される言葉だからです。拍とは、原則平仮名1字が1泊。長音の伸ばす部分、促音の小さい「つ」も1拍に数え、きゃ、きゅ、きょなどの小さい「や、ゆ、よ」を加える拗音は平仮名2文字になりますが1拍です。例えば、「シュレッダー(shredder)」は
シュ・レ・ッ・ダ・ー (5拍)
「ケンタッキー」なら
ケ・ン・タ・ッ・キ・ー (6拍)になります。
4拍がいちばん安定
そして日本語の音のリズムは4拍がいちばん安定し、話すのも聞くのも心地よいので、長い単語や表現は4拍に略して言うものが多くなります。以下に例をあげます。
朝に(スポーツなどを)練習すること。 | 朝練 |
連続(テレビ)ドラマ | 連ドラ |
早い時間に弁当を食べること | 早弁 |
東京証券取引所 | 東証 |
公正取引委員会 | 公取 |
棚からぼた餅(ことわざ) | 棚ぼた |
藪(やぶ)をつついて蛇を出す(ことわざ) | 藪蛇 |
デジタルカメラ(外来語) | デジカメ |
ブラスバンド(外来語) | ブラバン |
このような略語がきわめて多いのが日本語の特徴です。特に外来語は日本式発音では拍数が多くなるものが多いのでそれだけ略語も多く、しかも新しい略語がどんどんでてきます。
「コン」のつく外来語の略語
ちょっと遊び心で「コン」のつく外来語の略語を集めてみました。それぞれ元の正式な英語を書くことができますか?
- リモコン
- パソコン
- エアコン
- シネコン
- カラコン
- ロボコン
- 合コン
- ボディコン
- コンビニ
いかがでしょう?実は、実は、上の9つの「コン」で始まる英語、すべて異なるのです。
以下が答えです。
なかなか多彩な「コン」ですね。
略語の作り方
上の例で気づいた方もおられるかもしれませんが、基本的に略語の作り方は、
のが原則です(リモート・コントロール)。そして複数に分けられない場合は
- コンペティション → コンペ
- サプリメント → サプリ
- パンフレット → パンフ
のように頭だけを取ります。(この時はなぜが3拍が多そうですね)
例外も多い
上の原則には例外ももちろんあります。上の「コン」の例では「コンビニエンス・ストア」が「コンスト」ではなく「コンビニ」になっていますね。
「エンターテインメント」も「エン・メン」になってもおかしくなさそうですが「エンタ・メ」と前3拍、後ろから1拍で「エンタメ」となっています。
「エンタの神様」(The God of entertainment)というお笑い番組があります。「エンタ」という音の響きがいいからでしょうか。
「ケンタッキー・フライド・チキン」、「マクドナルド」はどう略す?
タイトル下の「ケンタッキー・フライド・チキン(肯德基)」「マクドナルド(麦当劳)」の略し方ですが、東京と大阪で違うようです。
東京 | 大阪 | |
ケンタッキーフライドチキン | ケンタ | ケンチキ、ケンタキ |
マクドナルド | マック | マクド |
世代によっても違うようです。
一般的に東京の人かっこいいスマートな語感を好み、大阪人は、”ぼってりしたというか、野暮ったい感じの言い方が好きです。
ちなみに私は学生時代「ケンタッキーフライドチキン」は後ろの4拍をとって「ドチキン」と呼んでいました。
(以上 「日本語の大疑問」国立国語研究所編(幻冬舎新書)などを参考にしました。)
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