「場所+に」「場所+で」
「に」と「で」は共に場所を表す時使います。以下の例について「に」と「で」がどのように使い分けられているかわかりますか?
- 奈良に鹿がいる。
- 奈良で鹿と遊ぶ。
- 奈良公園に車を止める。
- 奈良に住む。
- 奈良公園で盆踊り大会がある。
- 奈良公園にゴミを捨てる。
- 奈良公園でごみを捨てる。
- 奈良に生まれる。
- 奈良で生まれる。
「に」+いる・ある、「で」+その他の動詞
まず存在を表す文として最初に勉強するのが「机の上に本があります。」は皆さんよく知っています。だから「いる」または「ある」が使われる文は「に」、その他の動詞なら「で」が使われると考えられます。
「に」+「存在を示す動詞」、「で」+「動作を示す「いる」「ある」」
上のように考えると、「奈良に住む」「公園で盆踊りがある」などが例外のように思えますが、上のルールは「に」の後には「存在性の動詞」(ある・いる・住む・泊まる・止まるなどなど)がくる、「ある・いる」でも単なる存在以外の意味を示す場合は「で」が使われる、と考えればよいでしょう。
(「盆踊り大会がある」の「ある」は存在ではなく「実施される」という意味。)
到達点の「に」は別物
「に」の根本的な意味は「到達点」を示すというものです。「上海へ行く」は方向性を示し、「上海に行く」は到達点としての上海に重点を置いた言い方でしたね。
同様に「奈良公園にゴミを捨てる」の「に」は奈良公園そのものにおける存在を示すのではなく、到達点としての奈良公園を示す言い方です。だから「東大寺じゃなく、春日大社でもなく、奈良公園に捨てる。(←どれもダメです!)」というニュアンスが付け加わる言い方です。
到達点の「に」は今論じている存在の「に」とは少し違うものです。
「に」の古い使い方も残っている
「帝釈天に産湯を使い、姓は車、名は寅次郎。」というのは往年の日本の人気映画シリーズ「男はつらいよ!」の中で主人公の寅さんがよく言う口上の一部。「帝釈天(場所)に産湯を使った」という風に「に」のあとに「動作動詞」を使うのは少し古風な言い方として残っています。
「大阪に生まれる」は「大阪で生まれる」の古風な言い方です。
以上、意外と単純ではありませんね。
(本記事は「はじめての人の日本語文法」野田尚史著 くろしお出版、などを参考にしました)
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