「どうぞ」と「どうか」の違いについて

「どうぞ」と「どうか」

 「どうぞ」と「どうか」を比べてみましょう。

  • どうぞよろしくお願いします。
  • どうかよろしくお願いします。
  • どうぞお元気で!
  • どうかお元気で!

 上の2例ではどちらでも使えますし、あまり大きな違いはないように見えます。しかし「どうか」の方が好ましい場合、「どうぞ」の方が好ましい場合があるのです。

「どうぞ」の方が好ましい場合

  • どうぞお座りください。
  • どうぞ召し上がってください。
  • どうぞお好きなように。

「どうか」の方が好ましい場合

  • どうか明日天気になりますように。
  • どうか命だけは助けてください。

 それぞれの例文を見て比べると「どうぞ」は「おすすめ」または「ご随意に」ということ、「どうか」は願望を言う時に使います。

「どうぞ」→おすすめ、「どうか」→おねがい

 使い分けの基本はこうです。

「どうぞ」と「どうか」

「どうぞ→お勧め」「どうか→お願い」が原則的なつながりであると覚えておきましょう。冒頭の「(どうぞ/どうか)よろしく。」「(どうぞ/どうか)よろしく。」は話し手の願いを前面に出して言いたい時に「どうか」が使われることになります。

【参考】動作を相手に委ねる表現の難しさ

 相手に動作を強いる礼儀正しい表現はいろいろあります。「~していただけませんでしょうか」という長ったらしい表現もありますが、要は「~しろ!」という命令を、どれだけマイルドに言うかということなのです。

 その究極の形が「どうぞ」という相手の動作を規定せずに動かすという表現なのかもしれません。

勧め願い依頼命令

 上のことから「どうぞ」は動作を指定しない単独の「どうぞ。」という表現が成り立ちますが、話者の願望が入っている「どうか」は、単独では用いられませんね。

「どうぞ」という女性

 バスの中でお年寄りに席を譲る時に「どうか?」、食事を前に「どうか?」とは言いませんね。

【補足】「どうか」の大切な別の用法

 「どうか」には「正常ではなく心配すべき状況だ」という全然異なる意味の使い方があることも注意しましょう。

  • 彼女はこのごろどうかしている。(変だ)
  • それってどうかと思うよ。(よくない)

以上です。

(「日本語の難問」宮腰賢著 宝島社新書、を参考にしました。)

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