日本語文成分の「主題化」とは何?

文の主題化

「は」は「主題」を表す「とりたて助詞」であると習いました。ではそもそも「主題化」とはどういうことなのか、考えてみましょう。

日本語の基本文型

 日本語の文は、「述語」と呼ばれる部分にいくつかの名詞句が結合してできあがります。術語の種類によって3つの文型に分類されます。「名詞述語文」「動詞述語文」「形容詞述語文」でしたね。

  • 私は学生です。(名詞述語文)
  • 牛丼を食べる。(動詞述語文)
  • 桜はきれいです。(形容詞述語文)
日本語は「述語」のみが文の必須成分であって、英語のように必ずしも主語を必要としない

という特徴があります。

日本語の三文型

日本語の三文型⓵

 「術語」によって文全体が支えられているのでこのように縦に並べた方がイメージが合っています。名詞句の部分は並列的に横に広がっていきます。

日本語の三文型②

日本語の三文型②

日本語の「主題化」とは 

「張さんが 中南城で 李さんと 牛丼を 食べた。」という文を例にしましょう。

張さんが中南城で李さんと牛丼を食べた

 この文では「張さん」が「中南城」で「李さん」と「牛丼」を食べたという「客観的事実」が述べられているだけです。話し手の気持ち(ムードといいます)は表現されていません。

 例えば誰かがあなたに「張さん」について話してほしい時に、あなたが表現するとき初めて「張さん」を主題(テーマ)にし、「張さんは…」と話し始めるのです。

 ちょうど花束の中の一つの花を際立たせで「カード」を添えるようなものです。

張さんは中南城で李さんと牛丼を食べた。

 文の「主題化」とは中立的な文に発話意図という意味を持たせる役割があるのです。

文の格成分の主題化

 同じ要領で文のその他の格成分も主題化することができます。

  • 中南城で何があった? → 中南城では 張さんが 李さんと 牛丼を食べた。
  • 李さんと何をした? →  李さんとは 張さんが 中南城で 牛丼を 食べた。
  • 牛丼は? → 牛丼は 張さんが 中南城で 李さんと 食べた。
格成分の主題化

格成分の主題化

 「主題化」とは客観的な文に発話者の意図(ムード)を付け加えて、文全体の意図するものを明らかにすることなのです。

「が格」「を格」の主題化の際に「~がは」「~をは」ではなく「が」「を」は必ず省略される「~は」になることに注意しましょう。これは「が格」「を格」は「術語」との結びつきが本来強いので、あえて残す必要がないことが原因と言われています。

格成分以外の主題化について

 以上は格助詞のついた格成分についての主題化です。(格助詞については以下参照)

次に格成分、つまり直接述語に密接につながっている成分以外の主題化について見ましょう。

象の鼻が長い。
 上の文章は「桜がきれい。」と同じ形容詞述語文と考えられますね。この文章の「象の鼻」を主題化すれば、「象の鼻は長い」となりますね。鼻が長い象
 では「鼻」を修飾している「象」の部分だけを主題化したら?
象(の)は鼻が長い → 象は鼻が長い
同じように「鼻」だけを主題化したら、
鼻は象が長い
という言い方が可能となります。それぞれどんな状況で発話されるか、考えてみてください。
今日は以上です。
日本語教師として日本語学科新入生に贈る言葉
かつて常熟理工学院でボランティア日本語教師をしていた時、日本語学科の新入生の前でこんな話をしました。教師としても新人であった私が、ドキドキしながら話したことを覚えています。

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