「は」と「が」の違いについて整理しましょう。
「主題」と「解説」、「旧情報」と「新情報」
- 私は張です。
- 鳥は空を飛びます。
- 彼女は美しい。
これらは「主題」のあとに「解説(内容)」が来る形です。「私」について言えば名前は「張」です。「鳥」というものは「空を飛びます」、「彼女」については「美しい」です、ということです。「主題」は話者も聞き手も共に知っている「旧情報」、「解説」は聞き手に知らせたい「新情報」ということもできます。
話し手の伝えたいこと、言いたいことというのは当然「新情報」になりますね。
つまり「~は…」の形で表現されるものは後ろの「…」の部分が言いたいことになります。
「~は…」は後ろが言いたいこと
次に以下の二つの文を比べましょう。
- 私は張です。
- 私が張です。
これらの発話が行われる状況を想像してみると。
- 「あなたは誰ですか?」「私は張です。」
- 「張さんは誰ですか?」「私が張です。」
「~が…」の形で表現されるものは前の「~」の部分が言いたいことになります。
「~が…」は前が言いたいこと
となります。前が言いたいことになるものを難しい言葉で「総記」といいます。「総記」とは「他でもない~が…」、「私こそが張です。」というように「強調」されます。
以上が基本。次に「~は…」「~が…」の前後ともに新情報、つまり前後ともに言いたいことである場合です。
「新情報」+「新情報」対比は「は」、それ以外は「が」
「言いたいこと」+「言いたいこと」つまり聞き手にとってともに新情報(「新情報」+「新情報」)のケースです。
- 雨は降るが、雪は降らない。(対比)
- 雨が降る。(中立叙述)
「対比」はわかりやすいですね。「猫は好き」といえば、他の例えば「犬は嫌い」なのかということを連想させます。二つ対比しなくても別の比較するものを連想するのが「は」の対比用法。
「中立叙述」とはわかりにくいですが「窓から富士山が見える」「高速で事故があった」「蛇口をひねると水が出る」のような客観描写と考えていいでしょう。
以上まとめると、
- 言いたいことが後ろの時は「は」
- 言いたいことが前の時は「が」
- 前後とも言いたいことの時「対比」が「は」、対比でない客観描写は「が」
ということになります。
「は」のピリオド越え
これは「主題」を示す「は」の特徴の一つなのですが、「は」には「主題」が継続する限り文章を越えて長い範囲を修飾(影響を及ぼす)することがあります。これは「が」にはない特徴です。
私の猫は魚が好きです。妹が飼っていた金魚を食べてしまいました。悪いやつです。
上の文では、「が」は格助詞として「術部」である「好きです」にしかかかりませんが、「は」の方は3つの文全体にかかっています。
これは「は」の大きな特徴であるとともに「は」と「が」の違いを考える上で重要な点です。
〔参考〕「は」も「が」も使えないケースもある
李さんと張さんが部屋で王さんを待っています。張さんが席を外している間に王さんがやってきました。そこへ張さんが帰って来た時、李さんはこう言います。
- 李:「王さんは来てるよ。」
- 李:「王さんが来てるよ。」
実は上のどちらもちょっと変なのです。
こういう場合、「王さん来てるよ。」としかいいようがありません。
「は」と「が」、なかなか深いものがあります。
(以上は『日本語文法ハンドブック(初級・中上級)』を中心に参考にしてまとめました。)
「~んだ」「~のだ」を使う意味。
「~んだ」を使った「どうしたんですか?」「バスが遅れたんです。」という会話は「どうしましたか?」「バスが遅れました。」何が違うのでしょうか?学習者にとって難しい「~んだ」「~のだ」の使い方を「ドラえもん」のセリフで理解しよう。
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