今日2021年9月21日は中秋節。日本では「中秋の名月」。「嫦娥」は現在では中国の月ロケットの名前として日本でもよく見かける文字ですが、なんとなく「かぐや姫」に似た月の世界のお姫様のように思っている人が多いですね。良い機会なので「嫦娥」にまつわる神話がどんな話なのか調べて日本語にしてみました。
嫦娥奔月
言い伝えによると、遠い昔10個の太陽が一度に空に現れ、農作物は枯れ人々は生活の糧を失った。その時、后羿(こうげい)という無限の力を持つ英雄が、民のために崑崙山にのぼり、天に向かって弓を射て、一気に九つの太陽を射落とし、一つだけを残して人々を禍から救った。
后羿はこのため民の尊敬を受け王になり、嫦娥という美しい妻を娶った。后羿は芸能や狩りにいそしむ以外は一日中妻と一緒にいて、才ある夫と美貌の妻のカップルは人々の羨望の的になる。そして多くの志士たちが后羿に教えを乞いにくる中に、悪意をもった蓬蒙がいた。
ある日、后羿が崑崙山の友に教えを乞いにいったところ、たまたま王母に出会い、不死の薬をもらう。その薬を飲めばたちどころに天に昇り仙人になるというもの。妻との別離を恐れた后羿はその薬をしばらく妻に預けて保管しておくことにした。しかし嫦娥が化粧台の宝箱に薬を入れるところを、部下の蓬蒙に見られてしまう。蓬蒙は薬を盗み自分が飲もうと思った。
三日後、后羿が皆と狩りにでようとする。しかし、悪だくみを抱く蓬蒙は病気と偽り家に残る。后羿が去って間もなく蓬蒙は剣を持ち嫦娥の部屋に忍び込み彼女を脅し不死の薬を奪おうとする。蓬蒙に抗えないと知った嫦娥は機転を利かせ宝箱の薬を自ら飲んでしまう。嫦娥が薬を飲むと、彼女の体は地面を離れ、窓から天へと昇って行った。嫦娥は夫のことが忘れられず天上の世界の中では人の世に一番近い、月の世界で仙人となったのである。
若干の考察
嫦娥はとてもよい女性に仕立て上げられていますが、Wikipediaによると、初出の「淮南子」ではもともと嫦娥は仙人であったが、人間界で不死ではなくなったので夫から薬を盗んで月に帰ったが、結局ヒキガエル(ヘビ?)にされてしまった、という話であったとされています。
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