中国に長く駐在する日本人の中で、自分の家の窓を拭いたことがないという人が、実はことのほか多い。一度きれいにしてみてはどうか。日本であろうが、中国であろうが単身赴任となれば、掃除、洗濯は嫌でもこなさねば生きてゆけない。日本におれば窓などもある程度は美しく保とうとするだろう。しかしここ中国ではやらない。なぜか。
理由は明白である。よく言われる。中国では掃除してもすぐに汚れる、汚れるというよりすぐに泥だらけになる、きれいにするだけ損だ、という。なるほど中国人の家庭においても、窓はきれいにしない習慣ではあるようだ。そして窓自体、特に外面は構造上拭きにくい構造になってしまっている。隣近所の窓を見れば、どこもかしこもほぼ同じようなもの。心配はいらぬ。窓の汚れはある程度進むと、それ以上進まない。定常状態になる。それで外が見えないということはない。何の不便もない…、からである。
その前提で、あえて窓ふきというものをやってみることをお勧めする。1日でやろうとすると大変だ。毎日少しずつやってみる。事前にスーパーに行き、それなりの道具を購入することは不可欠だ。実はすぐには美しくならない。なにせ築後おそらく数年、あるいは10年以上、手を付けられることのなかった汚れである。下手な拭き方をすると余計に醜くなる。
続けていくと、少しずつ、少しずつ、窓からの景色が変わって見えてくる。最初は物理的にきれいにはできないと思っていた難しい部分も、工夫すれば手が届くようになるのが不思議である。やがて、塵芥が蓄積し、触れることすら避けていた窓枠に肘を乗せ、ゆったりと窓外を眺めてみようかという気にもなる。
そして、一度そのような理想状態を作っておけば、実はメンテナンスはそれほど困難なことではない。確かに汚れのつく速度は速いかもしれない。ただしそれを取り除く作業は、当初の作業に比べればあきれるほどたやすい。
そうなった時点で思い返してみよう。中国は、日本と違い埃だらけ、窓など拭いてもすぐ汚れてしまう、よって掃除しないのが賢明である。という誤った論法を。
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